晩秋は日ごとに気温が下がって空気が乾燥し、喉や鼻、気管、肌、毛髪なども乾燥しやすくなります。五行説で秋は「肺」に負担がかかるとされています。東洋医学では呼吸機能だけでなく、食物によって得られる「気」のエネルギーを生成して全身に巡らせるとともに、細菌やウイルスから体を守る免疫機能まで、「肺」はさまざまな役割を担っているといわれているのです。

肺がダメージを受けると血の巡りや水分代謝が悪くなり、免疫力が低下して風邪をひきやすくなります。健康であれば血液やリンパ液などによって潤されているため、大気の乾燥などの影響を受けにくいのですが、寝不足やストレスが重なると免疫力が低下し、体の不調へと繋がってしまうのです。
身体への不調は肺と表裏の関係にある大腸にもトラブルがおきやすく、痔(肛門は大腸に含まれる)なども悪化しやすくなります。秋は冬にそなえて栄養を蓄える季節でもあるので食欲も旺盛になりますが、肺の機能を整えて、乾燥しがちな体に潤いを与えるものを積極的に摂るようにしましょう。

晩秋の白い食べもの
大事なことは五行説に準ずる五色の中の「白い」食べ物。
豆腐や大根、湯葉、里芋などが肺を補うとされています。
とくに大根は消化を促進して食中毒を防ぎ、清熱作用で炎症を鎮める働きがあるので喉の痛みや咳止めの民間薬としても役立ってきました。
涼性なので体や胃が冷えている人は火を通したり、干した切干大根を使うなど温性にしてから食べるとよいでしょう。
唯一無二の『大根役者』
芝居道で未熟な役者を『大根役者』と呼ぶのは、大根はどんなに調理しても食傷(食あたり)がないように、未熟な役者は何の役に使っても当たるためしがないことからきた言葉だといいます。
大根は95%が水分ですが、特徴は複数の酵素の働きです。もっとも注目される消化酵素のアミラーゼはデンプンを分解し、食物の消化を助け胸やけや胃もたれを防ぎます。プロテアーゼはたんぱく質を分解し、リパーゼは脂質を分解します。焼き魚やイワシやサンマなどの脂っこい魚に大根おろしを添えると淡白になり食べやすくなりますよね。
カラッと揚げた天ぷらにもたっぷりと添えましょう。ピリッとした辛さは皮と肉のあいだにある成分です。80種類ほどあるカラシ油の中のMTBIという成分で、ガンの抑制効果もあります。この成分、野菜では大根にだけ含まれているものなのです。

大根めし
材料
米 3合
大根 1/2本
大根の葉(内側の柔らかい部分) 1/2本分
ちりめんじゃこ 1/2~2/3カップ
酒 1/4カップ
塩 小さじ1
油 大さじ1

作り方
①米は洗って30分間ざるに上げて水気をきっておく。
②大根は皮付きのまま、太目の千切りにする。大根の葉は適量の塩(分量外)を加えた熱湯で茹でて冷水にとってから水気を絞り、細かくたたいて塩小さじ2/3(分量外)を振ってから軽くもむ。それを布巾に包んでしっかり絞って水気をきる。
③ちりめんじゃこは乾煎りしておく。
④フライパンに油大さじ1を熱し、大根を透き通るまで炒める。
⑤炊飯器に①の米、④の大根、ちりめんじゃこと酒、塩、水3+3/4カップを加えて炊く。
⑥炊き上がった大根飯に、大根の葉をのせて混ぜ合わせれば完成です。

「東京薬膳研究所」代表。食養・薬膳研究家。1970年代より成人病と食生活の臨床研究に従事し、1986年に渡中。本場中国(四川省)にて高名な薬膳師に師事し、薬膳理論と料理技術を学ぶ。帰国後は日本の気候風土や伝統的な和食文化に合わせた独自の「和食薬膳」を提唱し、長年にわたりその第一人者として日本の薬膳界を牽引する。 『食は薬なり』の教えを広めるため、これまでに数多くのカルチャーセンターでの講師や全国各地での講演活動を行い、後進の育成や薬膳の普及に尽力。著書に『決定版 和の薬膳食材手帖』『旬を食べる和食薬膳のすすめ』(すべて家の光協会)など多数。

