夏本番を迎え、気温と湿度がぐんと上がるこれからの季節は、一年でもっとも食中毒が発生しやすい時期です。厚生労働省によれば、細菌による食中毒を防ぐ基本は次の三原則です。
つけない
手洗いを徹底し、生肉・生魚用と、野菜や調理済み食品用でまな板・包丁・トングを使い分ける
増やさない
購入した肉や魚はすぐ冷蔵・冷凍し、冷蔵庫は10度以下、冷凍庫はマイナス15度以下を保つ。詰め込みすぎず、庫内の温度が上がらないよう扉の開閉は最小限にする
殺す(殺菌)
食品の中心温度を75度で1分間以上加熱することを目安にし、多くの食中毒菌をしっかり死滅させる

買い物の際、生鮮食品を最後に選んで保冷バッグで持ち帰り、寄り道をせずまっすぐ帰宅して冷蔵庫にしまうことも、菌を増やさないための大切な予防策です。
大鍋料理に潜む罠!加熱しても生き残る「ウエルシュ菌」の脅威
夏場は「加熱すれば安心」とは言い切れない菌にも注意が必要です。その代表格がウエルシュ菌。
この菌は酸素の少ない環境を好み、加熱に強い「芽胞」という殻をつくる性質があります。
カレーやシチュー、煮物などを大鍋で大量に調理すると、鍋の底は酸素が乏しくなり、たとえ100度でグツグツ煮込んでも芽胞は生き残ってしまいます。

その鍋の粗熱を取らずに室温で放置すると、菌にとって好都合な12〜50度の温度帯、とくに45℃前後で爆発的に増殖するため、食べる前に温め直しても手遅れになるケースが少なくありません。
作り置きのカレーなどは、加熱後すぐに小分けにして氷水などで急速に冷まし、冷蔵庫で保存したうえで、食べる際には全体をよくかき混ぜながらしっかり再加熱することがウェルシュ菌の食中毒を防ぐもっとも有効な手段です。
前日に大量調理して常温に置いたまま翌日食べる、といった習慣は避けましょう。
ウェルシュ菌の症状
下痢:水のような下痢が出ます。血が混じることはあまりありません。
腹痛:お腹が張ったり、キリキリとした痛み(疝痛)が現れます。
発熱:熱はあまり出ず、出ても37°C前後の微熱程度であることが多いです。
その他:吐き気を伴うことがありますが、嘔吐はあまりみられません。
少量でも感染!焼き鳥や鶏刺しで相次ぐ「カンピロバクター」
また、鶏肉が原因となるカンピロバクターも夏に増加する菌の一つです。
熱そのものには弱く加熱で死滅しますが、ごく少量の菌でも感染が成立するため、鶏刺しや鶏わさ、加熱不十分な焼き鳥などは特に危険とされています。

潜伏期間が2〜7日(平均2〜3日)と、他の食中毒に比べて長いため、原因に気づきにくいのも特徴です。実際に今年も西日本を中心に、焼き鳥店などでのカンピロバクター食中毒による営業停止処分が相次いで報じられています。
専門家からは近年の気温上昇により食中毒シーズンが従来より早まり、通年化しているとの指摘も出ています。
まれに数週間後に手足のしびれなどを伴うギラン・バレー症候群を発症することもあるため、体調不良が長引く場合は自己判断せず医療機関を受診してください。
カンピロバクター菌の症状
下痢:水のような下痢、または血が混じる「血便」が出ます。
腹痛:お腹全体が激しく痛みます。発熱: 38°C〜39°C前後の高熱が出ることが多いです。
その他:頭痛、悪寒、倦怠感、吐き気、嘔吐などを伴います。
行楽シーズンも油断禁物。基本の対策を見直して安全な夏を
このほか、手指の傷から食品に付着しやすい黄色ブドウ球菌や、乾燥に強く卵や食肉に潜むサルモネラ菌も夏場は油断できません。
サルモネラ菌の症状
下痢:水のような激しい下痢、または血が混じる「血便」が出ます。
腹痛:お腹全体(特におへそ周辺)が激しく痛みます。
発熱:38°C〜40°C近くの急激な高熱が出ることが多いです。
その他: 頭痛、悪寒、吐き気、激しい嘔吐、体全体の倦怠感を伴います。
黄色ブドウ球菌の症状
下痢:水のような下痢が出ますが、血便になることは基本的にありません。
腹痛:激しい腹痛(胃のあたりからお腹全体)が突発的に起こります。
発熱:発熱することはほとんどありません。
その他:激しい吐き気、激しい嘔吐(何度も吐く)が主症状で、唾液が多く出る、冷や汗、虚脱感を伴います。

バーベキューや行楽での食事でも、生肉用と食べる用のトングや箸を必ず分け、まな板や包丁は使用後に洗剤でよく洗って熱湯や漂白剤で消毒するなど、政府広報オンラインでも紹介されている基本を今一度見直すことが、暑い季節を安全に乗り切る近道です。
少しでも食品に異変を感じたら口にせず廃棄する勇気も忘れないようにしましょう。
食中毒が疑われる症状が出たら?間違った対処に注意
万が一、激しい下痢や嘔吐、発熱などの症状が出た場合、自己判断で市販の下痢止め(止瀉薬)を服用するのは避けましょう。
食中毒の下痢は、体に侵入した原因菌や毒素を排出するための防御反応です。薬で無理に下痢を止めると、毒素が体内に留まり症状が悪化・長期化する恐れがあります。
一方で、腸内環境を整える「整腸剤(乳酸菌や酪酸菌など)」の服用は基本的に問題ありませんが、根本的な治療にはなりません。
最も大切なのは、脱水症状を防ぐために経口補水液やスポーツドリンクなどでこまめに水分を補給すること。
そして、自己判断せず速やかに医療機関を受診し、医師の診察を受けましょう。特にお子様や高齢者、免疫力が低下している方は重症化しやすいため、迅速な対応が必要です。
【参考文献】
厚生労働省家庭での食中毒予防
家庭でできる食中毒予防の6つのポイント
政府広報オンライン食中毒予防の原則と6つのポイント
※本記事は一般的な健康情報として作成しています。症状にお悩みの方や持病のある方、治療中の方は医師にご相談ください。
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日本抗加齢医学会会員 / 健康管理士 / 国際薬膳食育師 / 有機美容発酵食品マイスター
健康管理士の松渓と申します。34年にわたり健康関連の業界に身を置き、最新の医学的知見や伝統的な食養生をベースにした情報発信を行っています。
若い頃はスキー三昧の日々で大ケガを経験し、そこから健康の大切さに目覚めました。世にあふれる健康情報の中から、プロの目線で精査した「本当に役立つ知識」を分かりやすくお届けしていきます。

