コラム

小暑から始める養生法 〜暑さに負けない体と心をつくる〜

こんにちは。7月7日は七夕であり、二十四節気では「小暑(しょうしょ)」を迎えます。

いよいよ本格的な夏の到来です。

近年の日本の夏は、猛烈な暑さと高い湿度が長く続き、体にとっても心にとっても非常に過酷な環境となります。

「なんとなく体がだるい」「食欲がわかない」「ぐっすり眠れない」といった、いわゆる“夏バテ”の症状に悩まされる方も多いのではないでしょうか。

中医学の視点から見ると、夏の不調には明確な理由があります。私たちの体の中で何が起きているのか、まずはそのメカニズムを知ることから始めましょう。

 

 

「心(しん)」の過熱と精神への影響

中医学には「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」という考え方があり、夏は「心(しん)」と深く関係する季節です。

「心」は、全身に血液を送り出すポンプのような役割だけでなく、人間の精神、意識、思考、そして睡眠をコントロールする重要な場所とされています。

夏の強い紫外線や猛暑は、体内に過剰な「熱(火邪・かじゃ)」を生み出します。この熱が「心」を揺さぶることで、以下のようなトラブルが起こりやすくなります。

・睡眠の質の低下: 寝付きが悪い、夜中に何度も目が覚める、夢を多く見る。

・メンタルの乱れ: 理由もなくイライラする、焦燥感がある、落ち着かない。

・循環器の乱れ: 動悸がする、息切れがしやすい。

「脾(ひ)」の衰えと「湿(しつ)」の害

日本の夏のもう一つの天敵が「湿気(湿邪・しつじゃ)」です。

また、暑さからついつい冷たい飲み物やアイス、生もの(サラダや刺身など)を過剰に摂ってしまいがちですが、これらは消化吸収を担う「脾(ひ)」(胃腸)を直接冷やし、その働きを著しく低下させます。

胃腸の元気がなくなり、さらに体の中に余分な水分(湿気)が溜まることで、以下のような「夏特有の重だるさ」が現れます。

・体が鉛のように重く、やる気が出ない。

・食欲不振、しっかり食べていないのに胃がもたれる。

・お腹がゴロゴロ鳴る、軟便や下痢をしやすい。

・顔や手足がパンパンにむくむ。

夏を健やかに過ごすための「3つの薬膳アプローチ」と「夏の養生食材」

これらの不調を防いで快適に夏を過ごすために、以下の3つのアプローチを基本としましょう。

清熱(せいねつ): 体内にこもった余分な熱をクールダウンする。

②生津(しょうしん): 汗で失われた潤い(体液)を体の内側から生み出す。

③健脾利湿(けんぴりしつ): 胃腸を健やかに保ち、溜まった水分をスムーズに排出する。

そして薬膳では、食材が持つ五性や五味を大切にします。夏にお勧めの食材を、役割ごとに詳しく見ていきましょう。

体の熱を冷まし、潤いを与える食材(清熱・生津)

夏が旬の野菜は、その多くが天然のクールダウン成分を持っています。水分が豊富で、体にこもった熱を優しく逃がしてくれます。

▼トマト、きゅうり、ナス、ズッキーニ、冬瓜(とうがん)、スイカ

▼苦瓜(ゴーヤ): 中医学では「苦味(くみ)」は「心」の熱を冷まし、高ぶった感情を落ち着かせる効果があるとされています。

胃腸を助け、湿気を追い出す食材(健脾利湿)

体に溜まった余分な水分を尿として排出し、重だるさを解消します。

▼トウモロコシ(特にひげ茶もおすすめ)、枝豆、ハトムギ、小豆、緑豆

▼カボチャ、ジャガイモ、山芋: これらは胃腸のエネルギー(気)を補う代表格です。

汗で失った気を血を補う食材

大量の汗をかくと、水分だけでなく元気の源である「気」も一緒に漏れ出てしまいます。これを「気随液脱(きずいえきだつ)」と呼びます。

▼豚肉、鶏肉、うなぎ、タコ、イカ、大豆製品

▼梅干し、レモン、お酢(酸味): 中医学には「酸甘化陰(さんかんかいん)」という言葉があり、「酸味」と「甘味」を組み合わせることで、体の中に良質な潤いを生み出し、汗の出過ぎを抑える効果があります。

★調理の知恵:薬味を味方につける

夏野菜は優秀ですが、生で食べすぎると胃腸の「陽気(温めるエネルギー)」を傷つけます。

調理の際は生姜、ニンニク、大葉、ネギ、みょうが、香菜(パクチー)などの温める性質を持つ薬味や、スパイスを適量加えることで、胃腸を守りながら安全に熱を逃がすことができます。

トウモロコシとトマトの中華風卵スープ

①トウモロコシ1本の実を包丁でそぎ落とします(芯からも良い出汁が出るので、捨てずにとっておきましょう)。トマト大1個はひと口大の乱切りにする。

②鍋にごま油適量と生姜の千切り一片分を入れて弱火にかけ、香りが立ったらトマトとトウモロコシの実を加えて中火でサッと炒める。

③水500mlとトウモロコシの芯を加え、沸騰したら鶏ガラスープの素大さじ1を入れ、弱火で5〜7分ほど煮込む。

④トマトが少し崩れて旨味が出たら、一度火を止めてトウモロコシの芯を取り出し、塩と胡椒で味を調える。

⑤再び強火にして沸騰しているところに、よく溶きほぐした卵1個分を回し入れます。卵がふわっと浮いてきたらすぐに火を止め、器に盛り付け完成。お好みでブロッコリースプラウトやネギを入れても◎

トウモロコシは胃腸を元気にしながら余分な水分を排出し、トマトは熱を冷まして喉の渇きを潤します。さらに、卵が「心」に栄養を与えて精神を安定させ、質の良い睡眠をサポートします。冷房で冷えた胃腸を温かいスープでケアしましょう。

豚肉とゴーヤ・みょうがのさっぱり梅香炒め

①ゴーヤ1/2分は縦半分に切り、スプーンで綿と種をきれいに除き、3mm幅の薄切りにして塩少々をもみ込んで5分置き、サッと水洗いして水気を絞る。

②みょうが3本は縦半分に切ってから、斜め薄切りにします。豚肉は4〜5cmの長さに切り、軽く塩・胡椒を振っておく。

③梅干し2個は種を除き、包丁の刃でペースト状になるまで叩く。酒、みりん各大さじ1と醤油、砂糖各小さじ1の材料と叩いた梅をボウルに混ぜ合わせる。

④フライパンにごま油適量を熱し、豚肉を入れて中火で炒める。肉の色が変わったらゴーヤを加え、ゴーヤが鮮やかな緑色になり、少ししんなりするまで炒め合わせる。

⑤全体に火が通ったらみょうがを加え、③の梅調味料を回し入れ、強火で一気に汁気を飛ばすように手早く炒め合わせて器に盛り付けて完成。

ゴーヤの苦味で体内の余分な熱(火)をリセットし、豚肉で消耗した「気」と「血」を補います。さらに、気の巡りを良くして食欲をそそる「みょうが」と、潤いを生み出しクエン酸で疲労を回復させる「梅干し」を合わせました。夏に必要な要素がすべて詰まった一品です。

夏をどのように過ごすかは、その次の季節である「秋」や「冬」の体調にまで大きな影響を及ぼします。 夏に冷たいものを摂りすぎて胃腸を痛めつけたり、夜更かしをしてエネルギーを消耗し尽くしてしまったりすると、秋風が吹き始める頃に「秋バテ」として疲れが一気に噴き出します。また、免疫力が低下し、秋冬に風邪を引きやすくなったり、アレルギー症状が悪化したりすることにも繋がりかねません。

「冷たいものを飲んだら、次は温かいお茶を選ぶ」「冷房の効いた部屋では羽織るものを忘れない」といった、日々の小さな選択の積み重ねが、未来のあなたの大切な体を守ります。

自然の恵みである旬の食材の力を美味しく借りながら、この美しい夏の季節を、健やかに、そして笑顔で乗り切っていきましょう。

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