コラム

全粒穀物とは?健康効果・種類・1日の摂取量を研究論文から解説

この記事でわかること

        • 全粒穀物とは何か、玄米・全粒粉・オートミール・もち麦などの種類
        • 全粒穀物の摂取と、心血管疾患や2型糖尿病などのリスクとの関連
        • 全粒穀物が血糖・脂質・腸内細菌などに与える可能性
        • 全粒穀物の1日の摂取量の目安と、取り入れるときの注意点

「全粒穀物って、1日にどのくらい食べればいい?」「玄米やオートミールは体にいいの?」

健康を意識する中で、「全粒穀物」という言葉を目にする機会が増えています。

全粒穀物は、精製された穀物と比べて食物繊維やビタミン、ミネラルなどを含み、これまでの研究では、心血管疾患や2型糖尿病などのリスクが低いこととの関連が報告されています。一方で、「全粒穀物を食べれば病気を予防できる」「食べるだけで痩せる」といった単純な話ではありません。

この記事では、全粒穀物とは何か、その種類や栄養的な特徴、健康との関係について、これまでの研究をもとに整理します。

 

全粒穀物とは?白米や白いパンとの違い

全粒穀物とは、穀物の外皮や胚芽などを取り除かず、穀粒を構成する「胚乳・胚芽・ふすま」を残したものです。国際的なコンセンサスでは、全粒穀物は、籾殻などの食べられない部分を除いた穀粒について、胚乳・胚芽・ふすまの3つの構成要素が、元の穀粒と同じような割合で残っているものと定義されています。

一方、精製穀物では、主に胚乳を残して、ふすまや胚芽の多くが取り除かれます。そのため、全粒穀物は精製された穀物と比べて、食物繊維やビタミン、ミネラルなどを含むことが特徴です。

【参考文献】 Nutrients. 2021,14:138

穀物の「胚乳・胚芽・ふすま」には何が含まれる?

穀物の中心にある胚乳は、主にでんぷんを含む部分です。一方、胚芽やふすまには、食物繊維、ビタミン、ミネラル、さまざまな植物由来成分などが含まれています。そのため、精製の過程でふすまや胚芽を取り除くと、これらの成分の一部も失われます。例えば玄米と精白米を比較すると、玄米のほうが食物繊維、カリウム、マグネシウム、ビタミンB1などを多く含んでいます。

ただし、「栄養素が多い=そのまま病気を予防する」という単純な関係ではありません。全粒穀物には、食物繊維だけでなく、穀物由来のさまざまな成分が含まれており、それらを含む食品全体として健康との関連が研究されています。

【参考文献】玄米と玄米粉の加工適性、健康機能性と利用|農林水産省 米と栄養|農林水産省

全粒穀物にはどんな食品がある?

全粒穀物は玄米だけではありません。

代表的な食品には、次のようなものがあります。

玄米 オートミール そば
発芽玄米 大麦 キヌア
全粒粉パン もち麦 あわ・ひえ
全粒粉パスタ ライ麦 きび

玄米は代表的な日本の全粒穀物

日本人にとって最も取り入れやすい全粒穀物の一つが玄米です。玄米は、籾から籾殻を取り除いた状態で、ふすまや胚芽が残っています。白米は、そこからさらに精米することで、ふすまや胚芽の多くが取り除かれます。そのため、「全粒穀物を食べたいけれど、海外の食品は取り入れにくい」という場合でも、普段の白米を玄米や雑穀入りご飯に置き換える方法があります。

オートミールやもち麦も全粒穀物

オートミールは、オーツ麦を加工した食品です。また、もち麦は大麦の一種で、食物繊維を含む食品としても知られています。このように、全粒穀物は「玄米だけ」ではなく、さまざまな食品から取り入れることができます。

全粒穀物を食べると健康に良いのはなぜ?

全粒穀物が健康との関係で注目されている理由の一つが、食物繊維をはじめとする複数の成分を含んでいることです。全粒穀物には、食物繊維、ビタミン、ミネラルに加えて、ポリフェノールなどの植物由来成分も含まれています。また、全粒穀物を精製穀物の代わりに食べることで、食事全体の栄養組成や消化・吸収のされ方が変わる可能性があります。

ただし、どの成分が健康への効果を担っているのかは、まだ完全には解明されていないため、穀物全体に含まれるさまざまな成分と食生活全体の組み合わせとして捉えるのが適切です。

【参考文献】Crit Rev Food Sci Nutr. 2010,50:193-208

全粒穀物は生活習慣病のリスクとどう関係する?

全粒穀物と健康については、これまでに多くの疫学研究が行われています。

特に研究が多いのが、心血管疾患、2型糖尿病、がんなどとの関連です。

心血管疾患との関連

45件の研究を統合した解析データでは、全粒穀物の摂取量が1日90g増えるごとに、冠動脈疾患や心血管疾患のリスクが低いという関連が報告されています。また、全粒穀物の摂取量が多い人ほど、全がん死亡や総死亡のリスクが低いという関連も報告されています。

ただしここで重要なのは、これらの研究の多くは「全粒穀物を食べたから心血管疾患が減った」と直接証明したものではなく、全粒穀物をよく食べる人に、ほかの健康的な生活習慣が多い可能性もあります。

【参考文献】BMJ 2016,353:i2716

2型糖尿病との関連

2型糖尿病についても、全粒穀物の摂取量が多いほど発症リスクが低いという結果が報告されています。8つの観察研究、31万人以上を対象とした解析では、全粒穀物の摂取量が増えるほど2型糖尿病の発症率が低下する、直線的な逆相関が確認されています。ただし、こちらも観察研究が中心であり、全粒穀物だけで糖尿病を予防できると考えるべきではありません。

【参考文献】PLoS One. 2015,10:e0131377

全粒穀物は腸内環境にも関係する?

全粒穀物には食物繊維など、腸内細菌が利用できる成分が含まれています。

そのため、全粒穀物と腸内細菌叢との関係も研究されています。

全粒穀物を食べると腸内細菌は変化する?

人を対象とした介入研究をまとめたレビューでは、全粒小麦、大麦、ライ麦、オーツ麦などの摂取によって、腸内細菌叢の構成が変化する研究が報告されています。

ただし、研究によって変化する菌や多様性の結果は一致していないため、「全粒穀物を食べると腸内細菌が必ず良くなる」と断定することはできません。現時点では、全粒穀物が腸内細菌叢に影響を与える可能性があり、その変化が健康との関係を説明する経路の一つとして研究されている、と考えるのが適切です。

【参考文献】Nutr Rev. 2019,77:487-497

全粒穀物と短鎖脂肪酸

全粒穀物を摂取することで、腸内細菌による発酵にも影響する可能性があります。

全粒穀物を含む食事と精製穀物中心の食事を比較した無作為化クロスオーバー試験では、全粒穀物食で便中の酪酸が増加したことが報告されています。酪酸は、腸内細菌が食物繊維などを発酵することで生じる短鎖脂肪酸の一つです。

全粒穀物が腸内細菌や発酵産物に影響を与える可能性があり、それが健康との関係を説明する経路の一つとして研究されています。

日本人の腸内細菌についての詳細は【記事:日本人の腸内細菌は減っている?便の量と多様性の変化を最新研究で解説】でも詳しくご紹介しています。

【参考文献】Front Nutr. 2023,10:1187165

全粒穀物は1日にどのくらい食べればいい?

「全粒穀物は1日に○g食べればよい」という世界共通の基準があるわけではありません。

研究では、1日90g程度が一つの目安として使われることがあります。先ほどご紹介した研究でも、90g/日の全粒穀物摂取量増加を基準として、心血管疾患や総死亡などとの関連が評価されています。

ただし、この90gは「調理後の玄米90g」という意味ではありません。

研究では、食パンやシリアルなどを組み合わせた場合の90gが例として示されています。

そのため、日本の食卓を例にすると茶碗一杯(普通盛り)のご飯を150gと考えて、1日の玄米摂取量の参考にしていただければと思います。

日本では「置き換える」考え方が取り入れやすい

日本人の場合、普段の主食をすべて全粒穀物に変更する必要はありません。

例えば、

  • 白米の一部を玄米にする
  • 白米にもち麦を混ぜる
  • 食パンを全粒粉パンに変える
  • 朝食にオートミールを取り入れる
  • 主食の一部に雑穀を加える

など、精製穀物の一部を全粒穀物に置き換える方法が実践しやすいでしょう。

全粒穀物を選ぶときは「全粒穀物がどれくらい入っているか」にも注目

「全粒粉パン」「全粒穀物入り」などの表示があっても、製品によって全粒穀物の使用量は異なります。2021年の国際的なコンセンサスでは、全粒穀物食品について、乾燥重量ベースで50%以上の全粒穀物原料を含むことなどが提案されています。そのため、商品を選ぶときは「全粒粉」という言葉だけで判断するのではなく、原材料表示や全粒穀物の含有量を確認すると、より実態に近い選択ができます。

全粒穀物を食べるときの注意点

全粒穀物は健康的な食品ですが、誰にとっても「多ければ多いほど良い」というわけではありません。

急に増やすとお腹が張ることがある

全粒穀物には食物繊維が多く含まれるため、普段あまり食物繊維を摂っていない人が急に大量に摂取すると、腹部膨満感や便通の変化などが起こることがあります。最初は少量から取り入れ、体調を見ながら徐々に増やすとよいでしょう。

フィチン酸を過度に心配する必要はない

玄米などにはフィチン酸が含まれています。フィチン酸にはミネラルと結合する性質があり、鉄や亜鉛などの吸収に影響する可能性があります。ただし、通常の食生活において、全粒穀物を食べることだけを理由にミネラル不足を過度に心配する必要はありません。

むしろ、全粒穀物だけに偏らず、魚、肉、卵、豆類、野菜などを組み合わせた食事全体のバランスを整えることが重要です。

【参考文献】Are Anti-Nutrients Harmful?|Harvard T.H. Chan School of Public Health

今日からできる全粒穀物の取り入れ方

全粒穀物を取り入れるときは、「毎日完璧に食べる」ことよりも、普段の食事の一部を置き換えるところから始めると続けやすくなります。

白米の一部を玄米やもち麦に変える

最も取り入れやすい方法の一つです。いきなり100%玄米にするのではなく、白米に玄米やもち麦を混ぜる方法なら、食感や食物繊維の摂取量の変化も抑えながら取り入れられます。

パンを全粒粉パンに変える

パンをよく食べる人は、普段のパンの一部を全粒粉パンに変える方法があります。ただし、「全粒粉」という表示だけで判断せず、原材料表示なども確認しましょう。

オートミールを朝食に取り入れる

オートミールは調理しやすく、朝食などに取り入れやすい食品です。牛乳やヨーグルト、果物などと組み合わせることで、主食だけに偏らない食事にできます。

一度に増やしすぎない

食物繊維の摂取量が少ない人は、急に全粒穀物を大量に食べるのではなく、少量から始めることがポイントです。「毎日食べなければ意味がない」と考える必要もありません。まずは週に数回、主食の一部を置き換えるところから始めてもよいでしょう。

よくある質問(FAQ)

全粒穀物とは簡単にいうと何ですか?

穀物の胚乳だけでなく、胚芽やふすまなども含めて食べる穀物です。代表的な食品には、玄米、全粒粉パン、オートミール、もち麦などがあります。例えば、玄米にはふすまや胚芽が残っているため、白米より食物繊維やカリウム、マグネシウム、ビタミンB1などを多く含みます。

全粒穀物を食べれば糖尿病を予防できますか?

全粒穀物を多く摂取する人ほど2型糖尿病の発症リスクが低いという関連が、複数の研究で報告されています。ただし、これは主に観察研究から得られた関連であり、全粒穀物を食べるだけで糖尿病を予防できることを意味するものではありません。

全粒穀物を食べれば痩せますか?

全粒穀物を多く食べる人は体重増加が少ない傾向がありますが、無作為化比較試験では、全粒穀物を食べるだけで体重が明確に減少するとは確認されていません。ダイエットでは、全粒穀物を「痩せる食品」と考えるより、精製穀物の代わりに取り入れる食品の一つと考えるとよいでしょう。

【参考文献】Am J Clin Nutr. 2013,98:872-884

全粒穀物は1日にどのくらいの量を食べるべきですか?

研究でよく使われる摂取量の一つが1日90gです。ただし、すべての人が90gを必ず摂取する必要があるという意味ではありません。日本では、白米や精製パンなどの一部を玄米、もち麦、全粒粉パン、オートミールなどに置き換える方法から始めるとよいでしょう。

まとめ

全粒穀物は特別な健康食品として捉えるのではなく、普段の主食の一部を置き換えることがポイントです。

  • 全粒穀物は、胚乳だけでなく胚芽やふすまも残した穀物で、玄米、全粒粉パン、オートミール、もち麦などが代表的です。
  • 全粒穀物を多く食べる人ほど、心血管疾患や2型糖尿病、総死亡などのリスクが低いという関連が、これまでの研究で報告されています。
  • 食物繊維などを通じて、血糖や脂質、腸内細菌、短鎖脂肪酸などに影響する可能性も研究されています。
  • 研究でよく用いられる摂取量の一つは1日90g程度ですが、全員がこの量を摂る必要があるという意味ではありません。
  • 白米や精製パンなどの一部を玄米・もち麦・全粒粉パン・オートミールなどに置き換え、少量から徐々に増やすことが、無理なく続ける方法の一つです。

まずは「毎日たくさん食べる」ことを目指すのではなく、いつもの主食を少し全粒穀物に置き換えるところから始めてみましょう。

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