この記事でわかること
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- ケーキに含まれる脂質・糖質が、なぜ太りやすいと考えられているのか
- 同じように脂肪や糖を摂っても、体重への影響に個人差が生じる理由と腸内細菌の関係
- 無理な食事制限が腸内細菌や空腹感に与える影響と、リバウンドにつながる仕組み
- ケーキを我慢しすぎず、腸内細菌の多様性を保ちながら楽しむための食事・運動・睡眠のポイント
「ケーキを食べると太る」「甘いものはできるだけ我慢したほうがいい」――そんなイメージを持っていませんか?
確かに、ケーキは脂質や糖質を多く含むため、食べ過ぎればエネルギーの過剰摂取につながります。一方で、脂肪や糖を比較的多く摂っていても、健康や体重を保っている人がいることも知られています。
その違いに関わる要因の一つとして、近年注目されているのが「腸内細菌」です。同じものを食べても、体への影響が異なる背景には、腸内細菌の多様性や働きが関係している可能性があります。この記事では、ケーキと腸内細菌、そして太りにくい体づくりについて、研究をもとに考えていきます。
目次
ケーキを食べると太るのはなぜ?脂肪・糖のとりすぎは本当に不健康?
ケーキのカロリー・糖質・脂質はなぜ太りやすいと言われるのか
ケーキは、生クリームやバターなどの脂質と、砂糖由来の糖質を同時に多く含む食品です。脂質は1gあたり約9kcal、糖質は1gあたり約4kcalと、脂質のほうがエネルギー量が高く、脂質と糖質を両方たっぷり含むケーキは、少量でも高カロリーになりやすい特徴をしています。脂肪や糖を摂り過ぎる状態が続くと、肥満につながり、糖尿病のリスクが高まるとされています。糖尿病になると血液中の糖が増え、将来的に心臓病や網膜症、腎不全といった重い合併症につながる恐れがあることも知られています。こうした背景から、ケーキは「体に悪そう」というイメージを持たれやすい食品です。
脂肪や糖を多く摂っても太らない・健康な人がいるのはなぜか
一方で、脂肪や糖の摂取量が多くても健康を保っている人々がいることも報告されています。地中海に浮かぶギリシャのクレタ島の住民は、1960年代の調査で総脂肪の摂取割合が推奨値を上回っていたにもかかわらず、心疾患や癌による死亡率が最も低く、長寿の地域として知られていました。また、キューバは世界的に見ても砂糖消費量が多い国の一つですが、アメリカと比べて肥満率や糖尿病発症率が低いとする報告もあります。
こうした事例は、脂肪や糖の摂取量の多さだけでは健康リスクを単純に説明できないことを示しています。その背景要因として近年注目されているのが「腸内細菌」の働きです。
【出典】Public Health Nutrition. 2016,19:1164-1167 同友会グループ 2015,9 グローバルノート 世界の男性肥満率
ケーキで太らない人と太る人の違いは「腸内細菌」にある?
腸内細菌はカロリー吸収や免疫にどう関わっているのか

腸内細菌とは、私たちの腸の中に住む約40兆個ともいわれる微生物の集まりで、食べ物の消化を助けたり、体の防御機能を支えたりする働きを持っています。腸内細菌は、食べ物を発酵させて短鎖脂肪酸などの物質に変える過程を通じて、体が食事からどれだけカロリーを吸収するかに影響を与えるとされています。さらに、腸内細菌の一部はビタミンB群やビタミンKなど生命維持に必要な物質を作り出し、腸管の免疫システムを整える役割も担っています。同じようにケーキを食べても、体重への影響に個人差が出るのは、こうした腸内細菌の働き方の違いが関係している可能性があります。
【出典】Nutr Clin Pract.2013,27:201-214 mSystems 2024, 9:e00929-24
たくさん食べても太らない体質は腸内細菌で決まるの?
腸内細菌の「多様性」、つまり種類の豊富さが、体重管理に関わっている可能性が研究で示唆されています。腸内細菌の多様性が乏しい人は肥満になりやすい傾向があるとする報告があり、逆に多様な腸内細菌を保っている人は、同じように脂肪や糖を摂取しても、代謝やエネルギー利用の面で違いが出やすいと考えられています。ただし、腸内細菌叢とエネルギー代謝の関係については、まだヒトでの因果関係が完全に確立されたわけではなく、今後も研究が進められている分野です。たくさん食べても太らない体質がすべて腸内細菌で決まるわけではなく、遺伝や生活習慣など複数の要因が組み合わさっていると考えるのが実情に近いでしょう。
【出典】World J Gastroenterol. 2021,24:3837-3850
ダイエットでリバウンドしてしまうのはなぜ?
食事制限をすると腸内細菌はどうなるのか
無理な食事制限を長く続けると、腸内細菌の数や種類が減ってしまうことが知られています。マウスを用いた研究では、カロリー制限や偏った食生活が続くと腸内細菌の構成が変化し、有用な菌の一つであるParabacteroides distasonisが減少し、これがエネルギー消費量の低下と関連することが報告されています。極端な食事制限後には人でも代謝が大きく落ち込むことが知られており、腸内細菌のバランスの乱れが、リバウンドしやすい体質をつくる一因になっていると考えられます。
【出典】Nature Communications 2022,13:2060
空腹ホルモンが増えて脂肪をため込みやすくなるのはなぜか
食事制限で体が「栄養不足」と感じると、胃から分泌される空腹ホルモン「グレリン」の量が増えることが知られています。グレリンは脳の視床下部に働きかけて強い食欲を引き起こすホルモンで、長期の食事制限や睡眠不足によって慢性的に高い状態になりやすいとされています。この状態になると、体は脂肪を減らさないように信号を発するため、我慢して食事を減らしても、かえって脂肪をため込みやすくなってしまうのです。これが、ダイエット後にリバウンドが起こりやすい仕組みの一つと考えられています。
なお、痩せすぎることは健康に害がある場合があります。詳しくは【記事:やせていることは本当に美しい?理想の体重とは】の記事もご覧ください。
【出典】日本消化器病学会雑誌 2021,118:517-524
腸内細菌の「多様性」を保つには何をすればいい?
食生活で意識したいポイントとは
腸内細菌の多様性を保つには、まず食事の内容を見直すことが基本になります。野菜や海藻、豆類などに含まれる食物繊維は、腸内細菌のエサとなり善玉菌を増やす働きがあります。また、玉ねぎやごぼうなどに含まれるオリゴ糖のような「プレバイオティクス」と、ヨーグルトや発酵食品に含まれる乳酸菌などの「プロバイオティクス」を組み合わせて摂ることで、腸内細菌のバランスを整えやすくなるとされています。特定の食品だけに頼るのではなく、多様な食材をバランスよく取り入れることが、腸内細菌の種類を豊かに保つポイントです。
【出典】日本静脈経腸栄養学会雑誌 2016,31:797-802
運動は腸内細菌の組成にどう影響するのか
運動には、カロリーを消費するだけでない役割もあります。定期的な運動は腸内細菌の構成を変化させ、短鎖脂肪酸を作り出す菌を増やすことが複数の研究で報告されています。短鎖脂肪酸は腸のバリア機能を支え、免疫システムを整える働きを持つ物質です。またアスリートを対象にした研究では、運動習慣のある人の腸内細菌叢は多様性が高く、炎症に関わる物質のレベルが低い傾向があることも示されています。運動は腸内細菌を通じて、代謝や免疫の両面に良い影響を与える可能性があるといえます。
【出典】Nutrients. 2024,16:3663 腸内細菌学雑誌 2020,34:13-18
睡眠不足やストレスは腸内細菌にどう影響するのか
食事や運動と同じくらい重要なのが、睡眠とストレスの管理です。睡眠不足が続くと腸内細菌の活動リズムが乱れ、多様性が低下しやすいことが研究で示されています。北海道大学の研究では、睡眠不足によって腸から分泌される「αディフェンシン」という物質が減少し、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸も低下することが報告されました。ストレスも同様に、ストレスホルモンの増加を通じて善玉菌を減らす方向に働くとされています。腸内細菌の多様性を保つには、食事や運動だけでなく、質の良い睡眠とストレスへの対処も欠かせない要素です。
【出典】Gut Microbes 2023,15:2190306
ケーキを食べても太らないための食べ方・選び方は?
太りにくいケーキの選び方や食べる時間帯はあるのか
ケーキを楽しみながら体への負担を抑えるには、食べる時間帯や量にも工夫の余地があります。一般に、活動量が多い日中に食べるほうが、就寝前に比べて体への負担が少ないと考えられています。また、食べる量を小さめにする、たんぱく質を含む食品と一緒に食べて血糖値の急上昇を緩やかにするといった工夫も、体への負担を抑える助けになります。特定の時間帯や食べ方だけで太らないと保証できるものではありませんが、量と組み合わせを意識することは実践しやすい対策です。
ケーキを楽しみながら腸内環境を整えるコツ
ケーキを食べる際に、食物繊維の多い果物やナッツを添えたり、発酵食品を普段の食事に取り入れたりすることで、腸内環境への負担を和らげやすくなります。ケーキそのものを我慢するよりも、日常の食事全体で食物繊維や発酵食品をバランスよく摂り、腸内細菌の多様性を保つ土台を作っておくことが、無理なく続けられる工夫といえるでしょう。
太りにくいとされるケーキの種類にはどんなものがあるか
ケーキの種類によって、カロリーや脂質の量には大きな差があります。例えば、生クリームやバターを多く使うショートケーキは1切れあたり脂質25g前後になることがある一方、卵の泡立てを活かしたシフォンケーキは油脂の使用量が少なく、脂質は1個あたり4〜10g程度とされています。スフレチーズケーキも比較的軽い部類に入るとされています。ただし、同じ種類のケーキでも店舗やレシピによって使用する材料の量は異なるため、特定の商品名で安全性や効果を断定することはできません。あくまで一般的な傾向として、選ぶ際の参考にするとよいでしょう。
よくある質問(FAQ)
ダイエットでリバウンドしてしまう主な原因は何ですか?
急激な食事制限で腸内細菌のバランスが崩れたり、体が「栄養不足」と判断して空腹ホルモンの分泌を増やしたりすることが一因と考えられています。特定のダイエット法や人物の事例に限らず、無理な制限そのものがリバウンドを招きやすい要因です。
腸内細菌の多様性は食事だけで増やせますか?
食物繊維や発酵食品を意識した食事は基本ですが、運動や十分な睡眠、過度なストレスを避けることも腸内細菌の多様性維持に関わるとされています。特定のサプリメントや商品だけに頼らず、生活習慣全体を見直すことが大切です。
太りにくいとされるケーキの種類はありますか?
一般的に、生クリームやバターを多く使うケーキより、シフォンケーキやスフレチーズケーキなど脂質控えめなものが選ばれやすい傾向にあります。ただし製法や分量は店舗・商品によって異なるため、特定の商品名で安全性を断定することはできません。
子どもや高齢者でも腸内細菌を意識した食事は必要ですか?
腸内細菌は年代を問わず健康に関わるとされていますが、成長期の子どもや持病のある高齢者では必要な栄養バランスが異なります。極端な食事制限は避け、気になる場合はかかりつけ医や管理栄養士に相談することをおすすめします。
まとめ
ケーキは脂質や糖質を多く含むため、食べ過ぎには注意が必要です。ただし、体重や健康への影響は、ケーキそのものだけで決まるわけではありません。
- 脂肪や糖の摂取量が多い地域でも健康長寿の例があり、腸内細菌の働きがその背景の一つとして注目されています。
- 腸内細菌はカロリー吸収や免疫、ビタミン合成などに関わり、その多様性が体重管理にも関係する可能性があります。
- 無理な食事制限は腸内細菌のバランスを崩したり、空腹ホルモンの増加につながったりして、リバウンドの一因となる可能性があります。
- 食物繊維や発酵食品、運動、十分な睡眠を組み合わせ、腸内細菌の多様性を保つことが大切です。
大切なのは、ケーキを完全に我慢することではなく、量や種類、食べ方を工夫しながら、日々の食事と生活習慣全体で腸内環境を整えていくことです。
岡山大学大学院にて博士号(農学)を取得。腸内細菌や発酵食品の研究者として国内外で論文を多数発表。腸の健康や食に関する講演・セミナー、メディアへの寄稿など幅広く活動中。著書に『「腸内酵素力」で、ボケもがんも寄りつかない』(講談社)など。

