春は新生活の始まりとともに、気分が鬱々としたり無気力になったりしやすい季節です。東洋医学(中医学)において、春は自律神経のコントロールに関わる「肝(かん)」のバランスが崩れやすい時期と考えられています。
4月は入学、入社、転勤など新しい環境への期待から緊張感やチャレンジ精神が高まります。しかし、5月の大型連休(GW)を過ぎて緊張が解けると、気持ちの糸が切れたように情緒が不安定になり、心身の不調として現れることがあります。これらは病名ではありませんが、一般的に「五月病」と呼ばれる状態です。
不調を溜め込まず、春を快適に過ごすために、日々の「食養生」で心と身体を整えていきましょう。
目次
心と体にあらわれる「五月病」の主なサイン

東洋医学では、ストレスや環境の変化によって「肝」の気(エネルギー)の流れが滞る状態を「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と呼びます。
1. 精神面にあらわれるサイン
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気分の落ち込み、憂鬱感
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無気力、関心の低下
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イライラ、焦り、不安感
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判断力や思考力の低下
2. 身体面にあらわれるサイン
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身体のだるさ、疲労感
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睡眠の乱れ(不眠、眠りが浅い)
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食欲不振、お腹の不快感(便秘・下痢・腹痛)
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頭重感、めまい、吐き気
なぜ春は「肝」のバランスが崩れやすいのか?

東洋医学における「肝」は、自律神経の調整や血(けつ)のコントロール、精神の安定を支える重要な器官です。
春になって「肝」の働きが過剰に高まると、エネルギーや血が上半身に上りやすくなり、イライラや顔のほてり、不眠、精神的な不安定さを引き起こします。
また、春は冬の間に溜め込んだ老廃物や熱が体内にとどまりやすく、目や鼻の粘膜のゆらぎ、お肌の乾燥やトラブル(荒れ・赤み)の一因になることも考えられます。
春の養生:巡りを整える「苦味」と「酸味」の食材
春の不調を和らげるには、旬の食材が持つ自然のパワーを活用するのが効果的です。
1. 「苦味」の食材で余分な熱を逃がす

春に芽吹く山野草や春野菜特有の「ほろ苦さ」には、上りすぎた「肝」の気を落ち着かせ、身体の余分な熱や老廃物の排出をサポートする働きがあります。
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春かぶ【温性】:胃腸を整え、お腹のスッキリ感をサポート
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たけのこ【寒性】:体内の余分な熱を冷まし、スムーズな排出を助ける
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ふきのとう【温性】:冬に溜まった重だるさをやわらげ、巡りを促す
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菜の花【温性】:血のめぐりをスムーズにし、健やかな肌環境を保つ
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うど【温性】:身体の冷えや湿気を和らげ、不調を整える
2. 「酸味」の食材で「肝」をケアする

甘酸っぱい食べものは、「肝」の働きをやさしく和らげ、気血の巡りを整えてくれます。イライラを感じたときのリフレッシュや、疲れた身体のリカバリーにも最適です。
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調味料: お酢、梅干しなど
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果物: 柑橘類(レモン、ミカン、グレープフルーツなど)
【苦味×酸味】春の薬膳レシピ「うどの辛子酢味噌和え」
シャキシャキとした食感と特有の香りが楽しめる「うど」に、酸味の効いた酢味噌を合わせた手軽な春のひと品です。
材料(2人分)
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うど:1本
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酢水(あく抜き用):適量
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☆練り辛子:小さじ1/2
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☆砂糖:小さじ1
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☆酢:大さじ1と1/2
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☆味噌:大さじ1
作り方
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下ごしらえ: うどは厚めに皮をむき、短冊切りにして酢水に10分ほどさらしてあく抜きをします。
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タレを作る: ☆の材料(辛子・砂糖・酢・味噌)をボウルでよく混ぜ合わせます。
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和える: うどの水気をしっかり切り、キッチンペーパーなどで水分をよく拭き取ったら、②のタレと和えて完成です。
おいしく食べるワンポイント
春が旬の「あさり」や「わかめ」を足すのもおすすめです。海藻や貝類は身体を冷やす性質(寒涼性)がありますが、温性である辛子やお酢を合わせることで、全体のバランスが良くなります。
※厚くむいた「うどの皮」は、細切りにして炒め「きんぴら」にすると無駄なく2度美味しく味わえます。
【一覧】春の苦味食材がもつ食養生パワー
| 食材 | 中医学的な特徴・期待できる働き |
| 春かぶ | 消化を助け、胃腸を元気に保つ。喉の乾燥をやわらげ、水分代謝を促す。 |
| たけのこ | 体内の余分な熱を冷まし、スムーズな排泄やお腹の環境整備を助ける。 |
| ふきのとう | 冬の重だるさをすっきり整え、気管のコンディションやお腹の健康を維持する。 |
| 菜の花 | 血の巡りをスムーズに保ち、春先の不調をやわらげて身体のバランスを整える。 |
| うど | 気候の変化(寒さや湿気)による巡りの滞りを和らげ、身体の防衛力をサポートする。 |
まとめ:旬の恵みを美味しく食べて春を健やかに過ごそう
気候や生活環境の変化が大きい春は、知らず知らずのうちに心身へ負担がかかりやすい季節です。
「苦味」と「酸味」をバランスよく取り入れた温かい食事と、適度な休息を心がけ、身体の内側から季節の移り変わりに対応していきましょう。
※本記事は日常の食事や生活習慣を楽しむための健康情報です。症状が重い場合や長引く不安感、強い肉体疲労がある場合は、無理をせず医療機関を受診してください。
「東京薬膳研究所」代表。食養・薬膳研究家。1970年代より成人病と食生活の臨床研究に従事し、1986年に渡中。本場中国(四川省)にて高名な薬膳師に師事し、薬膳理論と料理技術を学ぶ。帰国後は日本の気候風土や伝統的な和食文化に合わせた独自の「和食薬膳」を提唱し、長年にわたりその第一人者として日本の薬膳界を牽引する。 『食は薬なり』の教えを広めるため、これまでに数多くのカルチャーセンターでの講師や全国各地での講演活動を行い、後進の育成や薬膳の普及に尽力。著書に『決定版 和の薬膳食材手帖』『旬を食べる和食薬膳のすすめ』(すべて家の光協会)など多数。

