コラム

体に良い食べ物とは?科学的根拠から学ぶ食品の選び方

「体に良い食べ物」と聞くと、リコピンやβカロテンなど、特定の栄養素や健康成分を豊富に含む食品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、食品の健康効果は、含まれる成分の量だけで決まるわけではありません。さらに、食品の構造や加工、他食品との組み合わせも、体への影響に関わっています。

この記事では、栄養成分の数字だけにとらわれず、農学博士の監修のもと、科学的な根拠をもとに体に良い食べ物の選び方を解説します。

体に良い食べ物は「成分」ではなく「食品そのもの」で選ぶべき?

リコピンやβカロテンなど「成分」で選ぶのは、なぜ古い考え方といわれるのか

体に良い食べ物は、成分の名前だけでなく、食品そのものとして選ぶ見方が広がっています。野菜にはβカロテンやビタミンC、食物繊維などが含まれますが、食品は成分の足し算だけでは説明できません。

食品の組成や物理的な構造をまとめて「食品マトリックス」と呼びます。京都大学などによる2026年の統合レビューは、この構造が栄養素の消化・吸収や代謝に関わると整理しました。納豆とテンペは栄養成分に共通点が多くても、食品マトリックスが大きく異なり、体内での働きも同じとは限らないとされています。

【参考文献】e-ヘルスネット「野菜1日350gで健康増進」, 東南アジア地域研究研究所「栄養素を超えて:食品マトリックスが代謝の健康を形成する」

「栄養至上主義(ニュートリショニズム)」とは?栄養素の量だけでは判断できない理由

栄養至上主義とは、食品の価値を栄養成分の量だけで判断する考え方です。メルボルン大学のスクリニス氏は2008年の論文で、この見方が食事の助言や食品の設計・販売に広く影響していると論じました。

この見方では、数字が同じなら生鮮食品も加工食品も同じ価値に見えてしまいます。米国立衛生研究所(NIH)の試験では、健康な成人20人が超加工食品(工業的な加工度が高い食品)と未加工中心の食事を2週間ずつ食べました。その結果、栄養成分を揃えても、超加工食品中心の食事期間は1日約508kcal多く食べ、体重は約0.9kg増えました。

【参考文献】Gastronomica. 2008 Cell Metab. 2019,30:67-77

「これさえ食べればOK」という一番体に良い食べ物は存在するのか

「これさえ食べればOK」という一番の食べ物はありません。「シチューは体に良い?」「ピザは?」といった疑問も、単品ではなく食事全体で判断するのが基本です。

食事バランスガイドは、1日の食事を5つの料理グループに分け、「つ(SV)」という単位で目安を示しています。成人の目安は次のとおりです。

料理グループ 1日の目安
主食 5〜7つ
副菜 5〜6つ
主菜 3〜5つ
牛乳・乳製品 2つ
果物 2つ

 

野菜は1日350gが目標ですが、2023年の平均は256gです。まず野菜を1皿増やしましょう。

【参考文献】e-ヘルスネット「食事バランスガイド(基本編)」 

体に悪い食べ物とされるのは?赤い肉・白い炭水化物・飽和脂肪酸

体に悪い食べ物とされるトップ3とは?赤い肉(加工肉)と飽和脂肪酸が避けたいといわれる理由

食事研究では、赤い肉と加工肉、飽和脂肪酸の多い食事は控えめがよいとされています。IARC(国際がん研究機関)は、ハムなどの加工肉を大腸がんの原因となる十分な証拠があるグループ1に、牛・豚・羊などの赤肉をグループ2A(おそらく発がん性がある)に分類しました。加工肉を毎日50g食べると、大腸がんのリスクが約18%高まると推定されています。

飽和脂肪酸は肉や乳製品の脂質に多く、制限すると動脈硬化性疾患のリスクが下がるとされます。目標量は成人で総エネルギーの7%以下です。

詳しくは記事「肉の食べ過ぎは危険?WHOも指摘するがん・糖尿病リスクとマクガバン報告の真実」へ。

【参考文献】IARC「Q&A on the carcinogenicity of the consumption of red meat and processed meat」

 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント」

白い炭水化物とは?精製された炭水化物が体によくないといわれる理由

白い炭水化物とは、精製(外皮や胚芽を取り除く加工)によって食物繊維が少なくなった白米・白いパンなどを指します。日本人の大規模調査では、女性で米飯の摂取量が多いほど糖尿病の発症リスクが上がる傾向が報告されました。1日4杯以上の群は、最も少ない群の1.65倍でした。男性は同様の傾向でしたが統計的に有意ではなく、パンやめん類では関連がみられませんでした。

一方、玄米や五分づき米は食物繊維に加えてビタミンB₁やマグネシウムも摂れるため推奨されています。白米をやめず、主食の一部を置き換える意識が現実的です。

【参考文献】国立がん研究センター「米飯摂取と糖尿病の関連について」

体に良い食べ物とされる5つとは?魚・野菜と果物・茶色い炭水化物・オリーブオイル・ナッツ

脳卒中・心筋梗塞・がんのリスクを下げるとされる食べ物5つ

食事研究では、魚・野菜と果物・茶色い炭水化物(全粒穀物)・オリーブオイル・ナッツの5つが、健康に良い傾向を示す食品群とされています。野菜と果物は、厚生労働省のeJIMが紹介する観察研究95件(200万例超)のレビューで、摂取が多い人ほど心血管疾患やがんのリスクが低いとされました。

根拠の中心はコホート研究(多くの人を長期間追跡して食習慣と病気の関係を調べる観察研究)で、因果関係までは断定できません。それでも、魚・全粒穀物・ナッツ・オリーブオイルのそれぞれで、リスクが低い傾向を示す報告が積み重なっています。

【参考文献】厚生労働省eJIM「抗酸化物質」

茶色い炭水化物とは?玄米・全粒穀物と、うどん・そばの違い

茶色い炭水化物とは、玄米・雑穀・全粒粉パンなど、精製されていない全粒穀物(外皮や胚芽を含む穀物)のことです。45件の前向き研究を統合した2016年のBMJの分析では、全粒穀物を1日90g(パン2枚とシリアル1杯程度)増やすごとに、心血管疾患のリスクが22%、がんが15%、全死亡が17%低い傾向がありました。

うどんは一般に精製した小麦の主食で、そばは製法や配合で幅があります。良し悪しを決めつけず、精製度の高い主食の日は、副菜や魚、豆類で食物繊維とたんぱく質を補いましょう。

【参考文献】BMJ 2016,353:i2716

オリーブオイルやナッツは毎日とっていい?「スプーンで飲む」ときの注意点

オリーブオイルやナッツは、食事の一部として毎日取り入れられます。スペインの研究では、心血管リスクの高い7,447人を約5年追跡しました。オリーブオイルを加えた地中海食で心筋梗塞・脳卒中・心血管死が31%、ナッツを加えた地中海食で28%少なくなっています。

これは食事全体の結果で、オイルだけを飲む効果を示したものではありません。サラダにかける、炒め物に使うなど料理の一部として使いましょう。ナッツはエネルギーが高く、1日小皿1杯が目安です。ナッツアレルギーの方は避けてください。

【参考文献】N Eng J Med. 2018,378:e34 e-ヘルスネット「脂質異常症の食事」

野菜と果物はジュースでも同じ?丸ごと食べたほうがいい理由

市販の100%フルーツジュースと、丸ごとの果物は何が違うのか

丸ごとの果物とジュースでは、体への影響が異なる可能性があります。米国の約18.7万人を追跡したBMJの研究では、週3サービング増えるごとの2型糖尿病リスクが、丸ごとの果物で0.98倍と低め、果物ジュースで1.08倍と高めでした。

WHOのガイドラインでは、果汁の糖類も「遊離糖類」に含まれ、総エネルギーの10%未満が目安です。厚生労働省の資料も、果汁100%のジュースは食物繊維が期待できず糖分も多いと注意しています。果物は丸ごと食べましょう。

【参考文献】BMJ 2013,347:f5001 食品安全委員会「成人及び児童の糖類摂取量」

 野菜ジュースは野菜の代わりになるのか

野菜ジュースは、野菜の代わりではなく補助として考えるのが適切です。名古屋市は2006〜2007年に野菜ジュース35銘柄を調べました。「1日分の野菜350g使用」とうたう商品でも、野菜を食べた場合と同じ栄養が摂れるとは確認できず、食物繊維は100gあたり0.1〜3.1gでした。報告書は小鉢1皿程度と考えるよう勧めています。

国民健康・栄養調査では、野菜ジュースも野菜類の一分類として集計されます。忙しい日の補いには有効ですが、食物繊維は他の野菜や果物で摂りましょう。

【参考文献】名古屋市「野菜系飲料(野菜ジュース類)」 農畜産業振興機構「野菜の定義について」

 皮ごと食べたい果物は?ブルーベリー・ぶどう・りんごの果皮が注目される理由

同じ研究で、ブルーベリー(0.74倍)、ぶどう・レーズン(0.88倍)、りんご・梨(0.93倍)は、2型糖尿病リスクの低さと関連していました。これらは皮ごと食べることが多い果物です。

りんごの分析では、ポリフェノール(植物の色素や渋みの成分の総称)は果肉より果皮に多く、フラボノールとアントシアニンは果皮だけに含まれていました。ただし、皮ごと食べると病気のリスクが下がるという直接の証拠はまだありません。よく洗って丸ごと味わうのがおすすめで、玄米と同じく、食物繊維などが残る形で食べる考え方です。

【参考文献】J Agric Food Chem. 2022,70:4407-4417

魚は毎日どのくらい食べると体にいい?

魚を適度に食べる人は、心筋梗塞などのリスクが低い傾向があります。ハーバード大学のモザファリアン氏らは2006年のJAMA論文で、EPA・DHAの多い魚を週1〜2回食べると、冠動脈疾患による死亡が36%、全死亡が17%低い傾向があり、成人では利益がリスクを上回ると結論づけました。

日本の多目的コホート研究(JPHC)でも、約4万人を約11年追跡した結果、魚の摂取量が最も少ない群(1日約20g)に比べ、最も多い群の虚血性心疾患リスクは約40%低い結果でした。青魚に多いEPAやDHAは、冠動脈疾患の発症抑制が期待されています。

一方、認知症との関連では、約4万3,000人の追跡でも、魚が増えるほどリスクが下がる明確な傾向はありませんでした。研究者は、多くの人が効果の出る量以上を食べており、増やしても効果が高まらない可能性を指摘しています。

効果の出方は病気ごとに異なります。イワシ・アジ・サバなどの青魚を無理なく続けましょう。妊娠中の方は水銀の多い一部の魚に目安があり、魚を避けるものではないとされています。

【参考文献】JAMA. 2006,296:1885-1899 国立がん研究センター「魚・n-3脂肪酸摂取と虚血性心疾患発症との関連について」 国立がん研究センター「魚、n-3系・n-6系脂肪酸摂取と認知症リスクとの関連」

よくある質問(FAQ)

じゃがいもは野菜に数えてもいいですか?

野菜の目標量には含めず、主食に近い食品として扱いましょう。国民健康・栄養調査では、いも類は野菜類とは別の区分で、野菜350gの目標は野菜類のデータが基礎です。ゆでる・蒸すなどの調理が基本で、揚げた食品は別に考えます。

コンビニや外食で体に良い食べ物を選ぶコツはありますか?

家庭の食事と同じ考え方で選べます。魚や豆類、野菜が入ったおかず、玄米や雑穀の主食、素焼きのナッツ、丸ごとの果物を選び、加工肉や菓子パン、甘い飲み物は控えめにします。原材料表示を確認する習慣も役立ちます。特定の店舗や商品を「体に良い」と断定することはできません。

加工食品や冷凍食品は、すべて体に悪い食べ物ですか?

すべてが体に悪いわけではありません。冷凍野菜や魚の缶詰は、食材を保存しやすくしたもので、手軽に取り入れられます。一方、ハムやソーセージなどの加工肉は大腸がんのリスクとの関連が指摘され、超加工食品は食べ過ぎにつながる可能性があります。原材料表示で確かめましょう。

持病がある人や子ども・高齢者も、同じ食べ方で大丈夫ですか?

この記事は、一般的な成人を対象にした研究にもとづく内容です。腎臓病や糖尿病などの持病がある方、服薬中の方、妊娠中の方、成長期の子どもや高齢者では、必要な栄養や控える食品が異なる場合があります。自己判断で極端に制限せず、主治医や管理栄養士に相談してください。

まとめ:体に良い食べ物は「成分」ではなく「食品そのもの」で選ぼう

体に良い食べ物を選ぶには、特定の栄養成分だけで判断せず、食品そのものの特徴や食事全体のバランスを考えることが大切です。

  • 食品そのもので選ぶ: 栄養成分だけでなく、食品の構造や加工度にも注目する。
  • 控えめにしたい食品: 加工肉や飽和脂肪酸の多い食事、精製された炭水化物に偏らないようにする。
  • 積極的に取り入れたい食品: 魚、野菜・果物、全粒穀物、オリーブオイル、ナッツをバランスよく食べる。
  • できるだけ自然な形で食べる: 果物はジュースより丸ごと食べ、野菜ジュースは補助として活用する。
  • 無理なく続ける: 特定の食品に偏ったり極端に制限したりせず、日々の食事全体を整える。


大切なのは、特定の食品や栄養素に過度な期待を寄せるのではなく、さまざまな食品を組み合わせながら、長く続けられる食習慣を身につけることです。

評価をお願いします

最近の記事