
これまで、さまざまな健康法を紹介してまいりました。皆さまにもしっかりと目を通していただけたことかと存じます。
健康になりたい、いつまでも元気に長生きしたいという気持ちは、皆さまの、共通の願いなのではないでしょうか。
ただ、歳を重ねるほど痛感する『体の老い』。
シミやシワが増えた、20代は黒々しく艶やかだった髪が縮れて量も減ってきた、高血圧や歯周病、成人型糖尿病など、体の老いからくる悩みは数知れず。
そんな悩みに対して、順天堂大学教授の佐藤信紘氏は、生命現象としての『老い』を知り、生命進化の道筋を解き明かすことで、中高年を襲う生活習慣病やがん、認知症までをも予防する方策を見いだすことができるといいます。
ミトコンドリアがエネルギーをつくりだす
私たちはひとりでは生きていません。それは大切な家族や友人がそばにいるという話ではなく、体内の細胞内に共生しているミトコンドリアの存在がとても大きいことを指しています。
私たちは運動や食べ物の消化、息を吸って吐くことまでにもエネルギーを使っています。
生きていくうえで欠かせない、このエネルギーをつくりだすのがミトコンドリアの役割です。
食事から摂り込んだ糖質や脂質、たんぱく質は、代謝を受けてミトコンドリアに送られます。そこでビタミンやミネラル、酸素を使いながらATP(アデノシン三リン酸)という生きていくうえでは欠かせないエネルギーを作りだします。
綺麗なあの人の秘訣はアレが作りだす水分量?
そして、ここで重要なのが『エネルギーを作る過程で水も作り出している』ということです。
新生児のみずみずしい肌やくすみのない綺麗な色ツヤは、多くが水の潤いによるもの。赤ちゃんの体は70〜80%が水分でできていますが、年をとると50%近くにまで減ってしまうのです。
ミトコンドリアがしっかりと機能していれば、成人で一日あたり約300から500mlの水が作られますが、老化やミトコンドリア障害という病気の状態では細胞内の水分が減少します。
すると細胞の代謝が悪くなり、肌の乾燥やシワの増加、シミやくすみが現れるようになるわけです。
ご近所の綺麗なあの人は、ミトコンドリアが作りだす水分量に秘訣があるのかも知れません。
食事量で酸化を抑える
「最近体調が悪い…」 「急に老けて見えるようになった」
わたしの周りではよくそんな言葉が会話に混ざっています。
加齢や老化、体調不良の原因の多くはエネルギー源である食物の摂取量と、代謝の低下が関係しているのをご存知でしょうか。
それらはただの体調不良や老化だけにとどまらず、ミトコンドリアの機能低下や退化に繋がる『負の連鎖』の鍵を開けてしまうことにもなりえます。
大切な食事面から見てみましょう。
生命維持のために食事からのエネルギー摂取は欠かせませんが、糖質や脂質、たんぱく質が消化され、ミトコンドリアでエネルギーとして取り出されるとき、必ず酸素を使用します。 酸素のほとんどが水と二酸化炭素に変換されますが、0.2%から最大で2%の酸素は体内で『活性酸素』になります。
食事の摂りすぎは過酸化を招き、少量であれば体に良い働きをするはずの活性酸素も、過剰に生み出されると細胞を傷つけるように…。
ミトコンドリアは常に酸化ストレスに晒されています。食べすぎてしまったときは、特に活性酸素が生じやすく、細胞を損傷させてしまうリスクも高くなるのです。
「何を食べるべきか」「どの栄養をとるべきか」という情報が蔓延していますが、老化を防ぐため、酸化ストレスの発生を防ぐという観点からは、食べすぎを減らすことが重要になっていきます。
そこで、成長期まではしっかりと食べ、壮年期の50代以降からは暴飲暴食を避けてカロリー制限することをおすすめします。 老化防止の鍵を握るミトコンドリアのエネルギー代謝には、酸化というプロセスが伴うことを忘れずにいましょう。