コラム

赤ちゃんの腸内細菌とアレルギーの関係|食器洗い機・除菌の影響を解説

この記事でわかること

    • 食器洗い機の使用と赤ちゃん・子どものアレルギーとの関係
    • 赤ちゃんの腸内細菌が免疫の発達に果たす役割
    • 自然との触れ合いやペットとの暮らしとアレルギーの関係
    • 抗菌石鹸や哺乳びんの消毒に関する考え方

「食器洗い機を使うと、赤ちゃんのアレルギーが増えるって本当?」「除菌しすぎると腸内細菌に悪い影響があるの?」――そんな疑問を持ったことはありませんか。赤ちゃんの健康を守るために、食器や哺乳びんを清潔に保とうとするのは自然なことです。一方で近年は、乳幼児期にさまざまな微生物に触れることと、免疫の発達やアレルギーとの関係も注目されています。

この記事では、食器洗い機と赤ちゃんのアレルギーの関係をはじめ、腸内細菌が免疫の発達に果たす役割、自然との触れ合い、抗菌石鹸や哺乳びんの消毒の影響について、現在わかっている科学的知見をもとにわかりやすく解説します。

なぜ乳幼児のアレルギーは増えているのか

乳幼児のアレルギーは、この数十年で増加傾向にあると報告されています。花粉症や食物アレルギー、ぜんそくなどのアレルギー疾患は子どもにもみられ、厚生労働省によると、国民の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患を抱えているとされています。こうした背景から、乳幼児期の免疫の発達や、赤ちゃんの腸内細菌とアレルギーとの関係が注目されています。

乳幼児のアレルギーと腸内細菌の関係

乳幼児のアレルギーには、免疫の発達と腸内細菌が関わっている可能性があります。腸には多くの免疫細胞が集まっていると考えられており、腸内細菌は免疫の働きを調整する重要な役割を担っています。特に乳幼児期は、腸内細菌の種類や数が大きく変化する時期です。この時期に多様な菌と出会うことが免疫システムの発達に影響し、アレルギーとの関係につながる可能性について研究が進められています。

【出典】厚生労働省「アレルギー疾患の現状等」

帝王切開や母乳育児は腸内細菌に影響する?

赤ちゃんの腸内細菌は、出産方法や授乳方法の影響を受ける可能性があります。経腟分娩では、産道を通る際に母親の腸内細菌や腟内細菌に触れるため、帝王切開で生まれた赤ちゃんとは、生まれた直後の腸内細菌の構成に違いがみられるという報告があります。

一方、帝王切開で生まれた赤ちゃんも、その後の母乳育児やスキンシップなどを通じて、母親由来の菌に触れる機会があります。複数の研究をまとめたレビューでは、母乳育児によって出産方法による腸内細菌の違いが和らぐ可能性も指摘されています。

そのため、帝王切開で生まれたから将来アレルギーになると考える必要はありません。出産方法は母子の状態によって選択されるものであり、赤ちゃんの腸内細菌やアレルギーには、その後の生活環境や食事など、複数の要因が関わると考えられています。

【出典】Front Nutr. 2022,9:941549

赤ちゃんの食器洗い機はアレルギーに影響する?

「赤ちゃんの食器を食器洗い機で洗うと、アレルギーが増えるのでは?」と気になる方もいるかもしれません。清潔な環境を保つことは感染症を予防するうえで重要です。一方で、乳幼児期にさまざまな微生物に適度に触れることが、免疫の発達に関わる可能性も指摘されています。こうした考え方とアレルギーとの関係を考えるうえで知られているのが、「衛生仮説」です。

アレルギーや衛生仮説については、こちらの記事でも詳しく解説しています。【記事:清潔すぎるとアレルギーになる?衛生仮説と腸内細菌・免疫の関係を最新研究で解説

赤ちゃんの食器洗い機と手洗いを比較した研究

食器洗い機の使用と子どものアレルギーとの関係を調べた研究があります。スウェーデンで行われた研究では、7〜8歳の子ども1,029人を対象に、食器を主に手洗いしている家庭と、食器洗い機を主に使用している家庭で、湿疹やぜんそく、花粉症などのアレルギー疾患の発症率を比較しました。その結果、主に手洗いをしている家庭では、食器洗い機を主に使用している家庭と比べて、湿疹の発症率が低い傾向がみられました。研究チームは、手洗いでは食器に微量の菌が残りやすく、それが免疫の発達に関係している可能性を考察しています。

食器の洗い方 湿疹の発症率 ぜんそくの発症率
主に手洗い 約23% 約1.7%
主に食器洗い機 約38% 約7.3%

【出典】Pediatrics. 2015,135:e590-597

食器洗い機で必ず赤ちゃんのアレルギーが増えるとは言えない

食器洗い機の使用とアレルギー発症率との関連は報告されていますが、この研究は観察研究です。そのため、食器洗い機を使うことが赤ちゃんや子どものアレルギーを直接引き起こすと証明されたわけではありません。また、手洗いをしている家庭では、発酵食品を食べる頻度など、ほかの生活習慣にも違いがあったことが報告されています。したがって、赤ちゃんのアレルギー予防のために食器洗い機の使用をやめる必要があるとはいえません。

大切なのは、衛生的な環境を保ちながら、公園や庭での外遊びなどを通じて、赤ちゃんが自然の中でさまざまな微生物に触れる機会も取り入れることです。

赤ちゃんのアレルギーと自然との触れ合いの関係

赤ちゃんが自然と触れ合うことも、アレルギーとの関係で注目されています。乳幼児期は免疫システムが発達する重要な時期です。この時期に多様な微生物と接する機会を持つことが、免疫の発達に影響する可能性があると考えられています。

【出典】Emerg Infect Dis. 2003,9:1016-1021

赤ちゃんのアレルギー対策として自然遊びを取り入れる

公園や庭での外遊び、砂場遊びなどは、赤ちゃんがさまざまな微生物に触れるきっかけになります。自然に触れる時間を日常生活に取り入れることは、赤ちゃんの腸内細菌や免疫の発達を考えるうえで、一つの工夫といえるでしょう。

ただし、外遊びの後に手を洗うことや、清潔な生活環境を保つことも引き続き大切です。重要なのは、除菌や衛生管理をやめることではありません。必要な衛生習慣を続けながら、自然との触れ合いを「足し算」するという考え方がポイントです。

犬や猫との暮らしは赤ちゃんのアレルギーに影響する?

犬や猫などのペットと暮らすことも、赤ちゃんがさまざまな微生物に触れる機会の一つと考えられています。日本の大規模な出生コホート研究であるエコチル調査では、胎児期や乳児期早期に室内で飼育されている犬や猫に触れていた子どもは、3歳までの食物アレルギーのリスクがやや低い傾向が報告されました。一方で、ハムスターへの曝露では、特定の食物アレルギーとの関連が示されています。このことから、ペットの種類によって影響が異なる可能性も考えられます。

そのため、アレルギー予防を目的として無理にペットを飼う必要はありません。すでに動物アレルギーがある家庭や、ペットを飼うか迷っている家庭では、参考となる情報の一つとして捉えることが大切です。

【出典】PLoS One. 2023,18:e0282725

赤ちゃんに抗菌石鹸は必要?

赤ちゃん用品や家庭用洗剤には「抗菌」をうたった商品も多くあります。「抗菌石鹸を使ったほうが赤ちゃんを感染症から守れるのでは?」と考える方もいるでしょう。感染症予防のために清潔な環境を保つことは重要ですが、日常生活において、抗菌成分を含む製品が必ずしも必要とは限りません。

抗菌石鹸は普通の石鹸より効果が高い?

抗菌石鹸に含まれる代表的な成分の一つにトリクロサンがあります。アメリカ食品医薬品局(FDA)は2016年、トリクロサンなどを含む抗菌石鹸について、普通の石鹸と水による手洗いよりも感染症予防に優れているという証拠は確認できなかったと発表しました。この結果を受け、アメリカではトリクロサンを含む一般消費者向けの薬用石鹸について販売が規制されています。感染症が心配される特別な場面を除けば、日常的な手洗いは、普通の石鹸と流水を使って丁寧に行うことが基本と考えられています。

【出典】Pharmacotherapy. 2015,35:328-336

赤ちゃんの哺乳びんの消毒はいつまで必要?

赤ちゃんの哺乳びんをいつまで消毒するかについて、すべての家庭に当てはまる明確な基準があるわけではありません。一般的には、生後3〜6か月ごろまでは、使用するたびに消毒することがすすめられる場合があります。厚生労働省もWHOの基準をもとに、乳児用ミルクの調乳や哺乳器具を衛生的に取り扱うことを推奨しています。その後は、赤ちゃんの発達や家庭の状況に合わせて消毒の頻度を減らしていくケースもあります。判断に迷う場合は、小児科医などに相談するとよいでしょう。

【出典】厚生労働省「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインについて

きょうだいが多いとアレルギーは少ない?

きょうだいの人数とアレルギーには、関連がある可能性が指摘されています。この考え方のきっかけとなったのが、1989年にイギリスの疫学者デイビッド・ストラカンが発表した研究です。この研究をきっかけに、「衛生仮説」が広く知られるようになりました。

きょうだいが多い子どもほどアレルギーが少ない傾向

1958年生まれのイギリスの子ども1万7,000人以上を追跡した調査では、年上のきょうだいが多い子どもほど、花粉症などのアレルギー疾患にかかる割合が低い傾向が示されました。その後の研究でも同様の傾向が報告されており、きょうだいが多いことで、さまざまな人や環境、微生物に触れる機会が増えることが一因ではないかと考えられています。

また、保育園や児童館などでほかの子どもと接することも、多様な人や環境に触れる機会につながる可能性があります。

【出典】Front Allergy. 2022,3:1051368

衛生仮説は「多様な菌との接触」が重要という考え方へ

現在の衛生仮説は、「清潔にしすぎることが悪い」という単純な考え方ではありません。

近年は、乳幼児期に多様な微生物と接する機会があることが重要だとする「生物多様性仮説」という考え方も紹介されています。そのため、感染症を防ぐための手洗いや衛生習慣は続けながら、自然との触れ合いや人との交流など、さまざまな環境に触れる機会を生活に取り入れることが、免疫の発達を考えるうえで大切だと考えられています。

よくある質問(FAQ)

赤ちゃんの食器洗い機はやめたほうがいいですか?

やめる必要はありません。食器洗い機の使用とアレルギー発症率との関連を示した研究はありますが、食器洗い機がアレルギーの原因であることを証明したものではありません。

食器洗い機は、衛生面だけでなく育児の負担を減らすうえでも便利な道具です。食器洗い機を使うことを避けるよりも、自然との触れ合いなど、赤ちゃんが多様な環境や微生物に触れる機会を生活に取り入れることを考えてみましょう。

赤ちゃんは除菌グッズを使わないほうがいいですか?

除菌をすべてやめる必要はありません。感染症を予防するための手洗いや衛生習慣は、引き続き重要です。そのうえで、外遊びや自然との触れ合いなど、赤ちゃんが自然な形でさまざまな微生物に触れる機会を取り入れることが大切です。

抗菌石鹸は普通の石鹸より赤ちゃんを守れますか?

現時点では、抗菌石鹸が普通の石鹸より感染症予防に優れているという明確な証拠はありません。日常的な手洗いでは、普通の石鹸と流水を使って丁寧に洗うことが基本と考えられています。

まとめ

赤ちゃんの腸内細菌や免疫の発達を考えるとき、重要なのは「除菌するか、しないか」という二択ではありません。必要な衛生習慣を保ちながら、自然や人との触れ合いを生活に取り入れることがポイントです。

  • 食器洗い機の使用とアレルギー発症率には関連が報告されていますが、食器洗い機がアレルギーの原因であることは証明されていません。
  • 赤ちゃんの腸内細菌は乳幼児期に大きく変化し、免疫の発達にも重要な役割を担っていると考えられています。
  • 出産方法や母乳育児、ペットとの暮らしなども、赤ちゃんの腸内細菌の育ち方に関わる可能性があります。
  • 公園や庭での外遊びなど、自然と触れ合う機会は、多様な微生物に出会うきっかけになります。
  • 除菌をやめるのではなく、衛生管理を続けながら、自然との触れ合いを「足し算」するという考え方が重要です。

感染症を防ぐための清潔な環境を保ちながら、赤ちゃんがさまざまな人や自然、環境に触れる機会も大切にする。このバランスを意識することが、赤ちゃんの腸内細菌と免疫の発達を考えるうえでの基本となります。

注)本記事は研究内容を一般向けに紹介するものであり、特定の商品による健康効果を示すものではありません。研究対象・条件は、通常の生活とは異なる場合があります。

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