コラム

人工甘味料を摂り続けても大丈夫?知っておきたい最新エビデンス

この記事でわかること

    • 人工甘味料は各国の規制当局が安全性を確認したうえで使用を認めている成分であること
    • 一方でWHOは2023年、体重管理や生活習慣病予防を目的とした常用は勧めないという指針を出していること
    • 体重や血糖値、腸内環境への長期的な影響については、まだ研究の結論が出ていない部分が多いこと
    • 食品表示を確認し、甘味料に頼りすぎない飲み物選びを日常に取り入れる工夫

「ゼロカロリーだから」「人工甘味料は安全と聞いたから」と、ダイエット飲料や甘味料入りの食品を毎日のように選んでいませんか。

アスパルテームやスクラロース、アセスルファムKといった人工甘味料は、日本を含む世界の規制当局が安全性を審査したうえで使用を認めている成分です。ただし「安全性が確認されている」ことと「積極的に摂り続けてよい」ことは、必ずしもイコールではありません。長期的な影響について、まだ研究が続いている段階だからこそ、「量を摂りすぎない」という視点を持つことが大切です。

本記事では、農学博士の監修のもと、最新の研究やWHOの評価をもとに、人工甘味料とどう付き合っていくのが望ましいかを一緒に考えていきます。

目次

人工甘味料はどのように安全性が確認されているのか

人工甘味料は各国の規制当局が安全性を審査したうえで使用を認めている

人工甘味料とは、砂糖に近い甘さを持ちながら、少量で強い甘味をつけられるため、食品や飲料に使われている甘味料です。代表的なアスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKの3種類は、日本で食品添加物として使用が認められており、世界120カ国以上で使用されています。米国FDA(米国食品医薬品局)や欧州の食品安全機関であるEFSA(欧州食品安全機関)、日本の食品安全委員会などが、それぞれ人工甘味料を個別に審査し、決められた使用条件のもとで安全性を確認しています。ただし、この「安全性の確認」は、決められた摂取量の範囲内で健康への悪影響が生じないと考えられるという意味であり、無制限に摂取してよいという意味ではありません。

【出典】米国FDA「Aspartame and Other Sweeteners in Food」 WHO「Aspartame hazard and risk assessment results released」

人工甘味料の一日摂取許容量(ADI)は安全性を評価するための目安

人工甘味料の安全性を管理する際には、WHOとJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議、国連の専門家組織)が定める一日摂取許容量(ADI)という指標が使われています。ADIとは、ある物質を一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響が生じないと考えられる一日あたりの摂取量のことです。アスパルテームはADIを体重1kgあたり40mg、アセスルファムKとスクラロースをそれぞれ15mgと設定しています。消費者庁の調査では、日本の成人の実際の摂取量はいずれの人工甘味料もADIの1%未満にとどまっており、通常の食生活でこの水準に達することは考えにくい状況です。

ただし、ADIは「この量まで積極的に摂取してよい」という推奨量ではありません。あくまで長期間の摂取を想定して、安全性を評価するために設定された指標です。人工甘味料の危険性を考える際も、ADIを超えているかどうかだけでなく、日常的にどの程度摂取しているのかを考えることが大切です。

視点 内容
各国規制当局
(FDA・EFSA・食品安全委員会など)
承認された使用条件下での安全性を、それぞれ個別に審査・確認している
WHO
(2023年ガイドライン)
安全性は否定しないが、体重管理・生活習慣病予防を目的とした常用は勧めていない

【出典】WHO「Aspartame hazard and risk assessment results released」 消費者庁「令和6年度 マーケットバスケット方式による甘味料の摂取量調査の結果について」

人工甘味料は単純に数字だけでは安心できない

複数の食品から気付かないうちに人工甘味料を摂取している場合も

ADIは、アスパルテームやスクラロースなど、単一の人工甘味料ごとに設定された数値です。ゼロカロリー飲料や菓子、調味料など、さまざまな食品から人工甘味料を日常的に摂取している場合、それぞれの摂取量は少なくても、知らないうちに人工甘味料を摂取する機会が増えている可能性があります。だからこそ、日々どのような食品や飲料から人工甘味料を摂取しているのか、食生活全体を見直す視点も大切です。

WHOは体重管理・生活習慣病予防のための常用を勧めていない

2023年、WHOは人工甘味料(非糖質甘味料)に関する新しいガイドラインを発表し、体重コントロールや生活習慣病(2型糖尿病、心血管疾患など)のリスク低減を目的として人工甘味料を使用することは勧められないという見解を示しました。人工甘味料の摂取は、短期的な試験では体重減少がみられる一方、長期間追跡した観察研究では、2型糖尿病や心血管疾患、死亡リスクの増加との関連も報告されています。こうした研究結果を踏まえ、WHOは人工甘味料を長期的に使用した場合の望ましくない影響について、慎重な見方を示しています。

【出典】WHO「WHO advises not to use non-sugar sweeteners for weight control in newly released guideline」

人工甘味料の体重・血糖値・がんリスクへの影響

体重・血糖値への影響は研究によって結果が分かれている

人工甘味料の体重への影響については、短期間の試験では、砂糖入りの飲料をゼロカロリー飲料に置き換えることで摂取カロリーが減り、体重がわずかに減少する効果が確認されています。一方、高齢者を約9.4年間追跡した観察研究では、人工甘味料入り飲料を毎日飲む人のウエスト周囲径の増加が、飲まない人の約4倍だったとも報告されています。血糖値については、2025年のメタ解析で、人工甘味料入り飲料と通常の飲料との間に統計的な差は見られませんでした。このように、人工甘味料は短期的な置き換えによる効果と、長期的な摂取習慣との関連を分けて考える必要があります。

研究タイプ 結果
短期のランダム化比較試験 摂取カロリーが減り、体重がわずかに減少
長期の観察研究(高齢者を約9.4年追跡) 毎日飲む人のウエスト周囲径の増加が、飲まない人の約4倍
血糖値のメタ解析(2025年) 人工甘味料入り飲料と通常の飲料の間に統計的な差なし

【出典】Qin et al., Frontiers in Nutrition, 2025

IARCの分類は「証拠の強さ」を示すもので「危険度」ではない

2023年、IARC(国際がん研究機関)は人工甘味料のアスパルテームを「グループ2B:ヒトに対する発がん性がある可能性がある」に分類しました。ただし、この分類は「どれくらい危険か」ではなく、「発がん性を示す科学的な証拠がどの程度あるか」を評価したものです。アスパルテームは、肝細胞がん(肝臓がんの一種)に関するヒトでの限られた証拠などをもとに分類されました。一方、JECFAは同年の評価で、アスパルテームのADIを従来どおり体重1kgあたり40mgとし、通常の摂取量では安全性に大きな懸念はないとしています。このように、IARCの「発がん性の可能性」と、実際の摂取量における健康リスクは分けて考える必要があります。

【出典】IARC評価要旨 米国がん協会「Aspartame and Cancer Risk」

人工甘味料の腸内環境や脳の反応への影響

人工甘味料の腸内細菌への影響には個人差がある

人工甘味料は腸内細菌を直接「殺菌」するわけではありませんが、種類によっては腸内細菌の構成や働きに変化を与える可能性が研究されています。120名を対象にした研究では、サッカリンやスクラロースなどの人工甘味料を摂取すると、腸内細菌の構成や血糖値の反応に変化が見られました。ただし、その反応には個人差が大きく、すべての人に同じ影響が現れるわけではありません。一方、アスパルテームやステビアでは明確な影響が確認されない研究もあり、2023年のレビューでも、人工甘味料が腸内細菌に毎回同じような変化を起こすとは結論づけられていません。

【出典】Suez et al., Cell, 2022 Nutrients, 2023

日常的な人工甘味料の摂取で脳の反応に影響が出る場合も

2026年に発表された研究では、日常的に非糖質甘味料を摂取している人は、砂糖を主に摂取している人と比べ、甘味を感じたときの脳の反応に違いがみられました。特に、食行動の自制や認知的なコントロールに関わる脳の部位(左背外側前頭前野)で、非糖質甘味料を習慣的に摂取する群の反応が強くみられました。ただし、この研究は30名を対象とした小規模な探索的研究であり、こうした脳反応の違いが実際の食行動や甘味への欲求にどのような影響を与えるのかは、まだ明らかになっていません。人工甘味料が脳の反応に与える影響についても、今後の研究が必要な段階です。

【出典】Food Quality and Safety, 2026

人工甘味料入りのゼロカロリー飲料と賢く付き合うために

「避ける」のではなく「摂りすぎない」を意識する

人工甘味料は各国の規制当局によって安全性が確認されている一方で、長期的な体重管理や生活習慣病予防に役立つかどうかについては、まだ確立された結論が出ていません。だからこそ大切なのは、「人工甘味料は危険だから一切口にしない」という極端な判断ではなく、「安全性は確認されていても、長期的な影響にはわからない部分が残っているからこそ、日常的に摂りすぎない」という考え方です。人工甘味料を完全に避けることよりも、普段の飲み物や食品の選択を見直し、甘味料に頼りすぎない食生活を意識することが大切です。

水やお茶・食品表示の確認で、摂りすぎを防ぐ

ゼロカロリー飲料は、糖分やカロリーの摂取量を抑えたいときに便利な選択肢です。ただし、日常の水分補給をすべてゼロカロリー飲料に頼るのではなく、水や日本茶、麦茶など甘味料を含まない飲み物と組み合わせることで、人工甘味料の摂取量を抑えながら無理なく水分補給ができます。また、商品によって使用されている人工甘味料の種類は異なります。パッケージの原材料表示を確認し、どのような人工甘味料が含まれているのかを意識するだけでも、複数の食品や飲料から気付かないうちに摂取することを防ぎやすくなります。

よくある質問(FAQ)

人工甘味料は結局、危険なのですか、安全なのですか?

通常の食生活の範囲であれば、人工甘味料が健康に重大な害を及ぼすという確立された証拠は、現時点ではありません。アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKなどは、各国の規制当局が安全性を評価したうえで使用を認めています。一方、長期的な体重や生活習慣病への影響については、WHOも「確実性が低い」としており、研究が続いています。「安全性が確認されている」ことと「積極的に摂り続けてよい」ことは別と考え、摂取量を意識することが大切です。

ゼロカロリー飲料を飲めば、ダイエットに役立ちますか?

甘い飲料をゼロカロリー飲料に置き換えることで、短期的には摂取カロリーを減らし、体重をわずかに減らせる可能性があります。ただし、人工甘味料を体重管理や生活習慣病予防のために常用することは、WHOが推奨していません。短期間の試験では体重減少が確認されている一方、長期的な効果については明確な結論が出ていないためです。水や無糖のお茶など、人工甘味料を含まない飲み物も選択肢にするとよいでしょう。

人工甘味料は海外では禁止されているのですか?

アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKが世界的に全面禁止されている状況ではありません。米国FDA、欧州EFSA、日本の食品安全委員会など、主要な規制当局が安全性を評価したうえで、使用条件を定めて認めています。ただし、WHOが体重管理や生活習慣病予防を目的とした常用を勧めていない点には注意が必要です。

妊娠中でも人工甘味料入りの飲料を飲んでも大丈夫ですか?フェニルケトン尿症の人は注意が必要と聞きました。

通常の摂取量であれば大きな心配は不要と考えられますが、フェニルケトン尿症(PKU)の方はアスパルテームに注意が必要です。アスパルテームは体内で「フェニルアラニン」を生じるため、これを代謝できない方では血中濃度が上昇し、健康に影響するおそれがあります。日本ではアスパルテームを含む食品・飲料に「L-フェニルアラニン化合物を含む」旨の表示が義務づけられているため、該当する方は表示を確認し、必要に応じて医師に相談しましょう。

【出典】消費者庁「食品表示基準について」

まとめ:人工甘味料は「摂りすぎない」意識でうまく付き合おう

ここまでの内容を振り返ってみましょう。

  • 人工甘味料のアスパルテーム・スクラロース・アセスルファムKは、日本を含む世界の規制当局が安全性を評価したうえで、使用を認めていること
  • WHOは2023年、体重管理や生活習慣病予防を目的とした人工甘味料の常用を勧めないという指針を示していること
  • 人工甘味料が体重や血糖値、腸内環境に与える長期的な影響については、まだ研究の結論が出ていない部分が多いこと
  • ADIは人工甘味料ごとに設定された安全性の指標であり、数値だけでなく、日常的な摂取習慣にも目を向けることが大切であること
  • 食品表示を確認し、水やお茶など甘味料を含まない飲み物も選びながら、人工甘味料に頼りすぎない飲み物選びを心がけること

 

人工甘味料は「危険だから避ける」と極端に考えるのではなく、「安全性は確認されている一方、長期的にはわからないことも残っている」と理解することが大切です。こうした視点を持ち、人工甘味料を摂りすぎない飲み物選びを日々の生活に取り入れていきましょう。

本記事は研究内容を一般向けに紹介するものであり、特定の商品による健康効果を示すものではありません。研究対象・条件は、通常の生活とは異なる場合があります。

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