コラム

味噌風味の七草粥

寒い季節がやってきました。
日が短くなり、日差しが弱まり、冷たい空気が流れ込む季節です。
寒さからくる冷えは身体のあちこちに不具合を生じる要因となりますが、東洋医学の五行理論によれば、この季節、特に負担がかかるのは、五臓の中では「腎」と教えています。
「腎」は腎臓だけでなく、膀胱・骨・耳なども、その支配下にあります。
さらに生命活動の源であると同時に、生殖機能を司るとも考えられていて、まさに肝腎要の臓器です。

目次

風邪・インフルエンザが流行る理由

さて、昨今ではこの季節限定とは言えなくなりましたが、寒い季節になると流行するのが風邪やインフルエンザなどの感染症です。
近年はこれに新型コロナウイルスが仲間入りするようになりました。この季節に風邪やインフルエンザが流行る理由はいくつかあります。

まず単純に、空気の乾燥によって粘膜に炎症が生じやすいことがあげられます。
粘膜は口と喉の内側、目の表面、食道、お腹、小腸、結腸の内壁にある常に湿っている組織で、喉や鼻の粘膜は、空気中に存在するウイルスや菌の侵入を予防する役目があります。
空気が乾燥してしまうと、鼻や喉の粘膜を保護しているバリア機能が低下して感染症にかかりやすくなります。

外出先から戻ったらうがいをしたり、部屋を加湿したり、外気に晒される鼻・喉を守りましょう。ハチミツレモンを作っておいて、お湯で割って飲むと、粘膜を労わるだけでなく殺菌力もあるのでおススメです。

 

冷えを嫌う腎・腰や五つの首を温める

まずはとにかく身体を冷やさないこと、全身をよく温めること、これが第一の養生となります。

お風呂に薬草を入れて身体の芯まで温まる・普段から腎のある腰や五つの首(首・両手首・両足首)を冷やさないようにするなど、防寒に心がけましょう。
ヨモギや枇杷の葉などを乾燥させておき、お風呂に入れると温まりますのでお試しください。また、就寝する時も肩口が冷えないように、首にタオルを一枚巻くだけでかなり違ってきます。

身体の中から温める辛味の食材

外からの防寒とともに、身体の中から温める食養に努めましょう。
具体的な食べ方としては、食材にしっかり火を入れて温めてから食べる。

また、身体を温めて病邪を発散し、気血の循環をよくする働きのある辛味の食材を意識して摂り入れましょう。この季節、ネギ・タマネギ・生姜・大根・ニンニク・ニラ・酒粕などの辛味の食材は大活躍します。

辛味の食材は、腸内環境を整えてくれる上に、細菌・病原菌に対する殺菌・解毒作用を持つため、風邪やインフルエンザ予防にも最適です。

他に、風邪の引きはじめには葛根湯という漢方生薬が有名ですが、この葛根湯に含まれている葛も、身体を温める効能を持った食材。

葛を使ったレシピと言うと、喉越しのよい葛切りが思い浮かびますが、ほどよいとろみをつける餡掛けなどに利用すると、お料理の幅も広がります。

不要な水分の滞りも要因

風邪やインフルエンザが流行るもう一つの要因として、不要な水分が体内に滞ることがあげられます。
これは腎の働きに関係し、五行では水行に配当されているため、水との関わりの深い臓器です。

気温が下がり汗腺が閉じて発汗ができない冬季は、水分代謝を腎臓・膀胱の利尿に頼ることになるため、冬は腎に負担がかかる訳です。
腎が疲弊すれば、当然利水はうまくいかなくなりますから、体内に余分な水分が滞りやすくなります。
いわゆる「水滞」、むくみの状態です。身体は不要な水分を何とかして出そうとします。

くしゃみ・咳・鼻水・発熱などもその活動の一環であり、一説によれば、水滞が生じると風邪の症状があらわれるとも言われています。
なので冬季の養生法としてもう一つ重要になるのが、腎の働きを助け水分代謝を上げることです。

野草の力を借りて冬を健やかに

では、どんなものを食べるのが良いでしょう?そのヒントは、やはり昔からの風習に見ることが出来ます。
五節句の一つ、陰暦1月7日の人日(じんじつ)の節句に食す七草粥です。
「せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ・春の七草」という和歌が知られていますが、これらは昔の人々にとって、青菜の少ない冬季の貴重な栄養源であったと考えられます。

しかし現代では、どちらかと言うと年末年始のご馳走で疲れた胃腸を休ませる効果の方が期待されそうです。暴飲暴食によって胃腸が疲弊すると、体調を崩す一因となるので、こちらも気をつけましょう。
さて、七草に代表される野草にはもちろん栄養素が豊富に含まれますが、同時に解毒・デトックス効果があります。
時には道端に生えている可憐な野草の力も借りて、この冬をどうぞ健やかにお過ごしください。

味噌風味の七草粥

①米は洗っておく。七草のスズナ(かぶ)、スズシロ(大根)は根と茎は切りとる。葉物は洗っておく。
②鍋にお湯を沸かし、スズナ、スズシロの葉を入れてさっとゆでて、水にとり、絞って粗みじん切り。あとの葉物もサッと湯を通して水にとり、絞ってみじん切りにする。
③電気窯の内釜に米と水を入れて火にかけ、湧いてきたら中火にして30分間炊く。米が軟らかくなってきたら、②の七草と白味噌を加え、15分蒸らす。
④器によそったら、柚子の皮のせん切りを添えて完成。

五行に従えば腎を助ける味は鹹味(かんみ)(しおからみ)。
塩分がなければ、人は利尿できません。鹹味はまた、身体を温めてくれる働きも持ちます。寒い地域ほどお料理の味が濃くなるのは、こうした理由もあるのです。

塩気はお料理には欠かせませんが、その中でも特にお味噌は、大豆の持つ解毒・利尿作用と相まって、冬季には欠かせない調味料。代表的な発酵食品でもあるので、腸内環境を整えてくれる点でも一石二鳥の効能を持ちます。

寒いこの時期は、より意識して鹹味の食材や調味料を使っていきましょうね。

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