コラム

秋食材を活かした養生

朝夕の冷え込みに、秋の深まりを感じる今日この頃。
この時期は、食卓にも季節の移ろいが現れます。実りの秋を迎え、新米、豊穣の海がもたらす魚介、そして甘みを増した根菜類など、旬の恵みが私たちの身体を労わってくれます。素材本来の力強い美味しさを味わえるのは、まさにこの季節ならではの贅沢と言えるでしょう。
旬の食材を取り入れることは、身体の調子を整える最も自然な養生法でもあります。

目次

 

 

秋なす

秋なすのうまみは、残暑の厳しい真昼の暑さと、夜半の冷気の温度差ゆえの果肉のしまりから生まれるともいわれています。
調理する前の『なす紺』といわれる鮮やかな色や、油で揚げたり、煮たり焼いたりしたときの『瑠璃色』など、なすの深さのある紫色には目を見はるものがあります。

【効果効能】
・血液の滞りを除く。
・熱を冷まし、腹痛・口内炎・乳の痛みを止める。
・腫れ物を消す。
・紫色の色素はコレステロール値を下げ、動脈硬化やがんを予防。
なすの色素成分には、生活習慣病やがんの予防効果があることが分かっています。
※ただし、なすは体を冷やすので食べ過ぎに注意!

焼きなすのごま酢かけ

①なす2個は皮が黒くなるまで焼いて冷水にとり、水の中で皮をむく。
②なすの水気を軽く絞り、ヘタをとって縦に3~4個に切り分け、バットに並べてだし汁、酒、醤油で薄めに下味をつけ冷蔵庫で一時間おく。
③ すりごま (白)大さじ2と1/2、砂糖小さじ2、酢小さじ2、醤油小さじ2を混ぜる。
④ ②を器に入れ、③をかける。

さつまいも

江戸時代中期の享保の大飢饉では、多くの餓死者が出たといわれるが、さつまいもを常食していた薩摩藩では、犠牲者が極めて少なかったといいます。
これを機にさつまいもが全国で栽培されるようになり、以後、凶作や飢饉のたびに救荒食として人々の命を救ってきました。

薬効から見ても救荒食にふさわしく、中医薬学では「さつまいもを常食すると五臓を肥やす」といわれ、胃腸を丈夫にし、精力を養う働きがあるとされます。
エネルギー源となるデンプンをはじめ、代謝を効率よくし疲労回復に役立つビタミンB1、ビタミンCは1本でほぼ一日分の必要量を満たします。

便秘や大腸がんの予防につながる食物繊維など、豊富な栄養素を含んでいて、ビタミンCが夏みかん並に多く、カリウムが多いのも特徴です。

【効果効能】
・目を明らかにし、渇きを止め、利尿し、二日酔いを予防。
・豊富な食物繊維が便通をよくし、大腸がんを予防。

さといも

さといもの名称は、野生の山の芋が山野にできるのに対し、里にできるという意からつきました。
いもは「芋名月」の異称もあるように、旧暦八月十五夜のお供えにもよく利用されます。
月見団子をお供えするイメージがありますが、本来はさといもを供えるものでした。

ちょうど月見のころがさといもの出盛り。
ほとんどの家が月見の宴で、皮付きのまま茹でた衣かつぎをお供えしたのは醍醐天皇の延喜年間だとされています。
なお、芋名月に対して、陰暦九月十三夜の月を栗名月、または豆名月と呼びます。

【効果効能】
さといもは芋類の中で唯一「辛味」に配当され、肌を潤すとされています。
気のめぐりを良くして瘀血を取り除き、消化を助け、便通を促します。
肌に潤いを与える薬効を秘めていて、皮膚や粘膜の炎症を鎮める作用もあり、生のまますりおろしたものは「芋薬」と呼ばれ、腫れ物ややけど、高熱性の治療に外用薬としても用いられてきました。

煮ころがし

鍋に皮をむいたさといもとだし汁、しょうゆ、砂糖を入れて、いもが軟らかくなるまで煮込み、最後にみりんを加える。

さといもの酢の物

生のさといもを薄く切って塩でもんでヌメリを取り、水にさらして三杯酢で食べる。

みょうが

みょうがは日本原産。古くから食用にされた日本独特の香味野菜です。
さわやかな香りと苦味、美しい紅色が、食欲の低下しがちな夏から秋にかけて重宝される代表的な薬味です。
熱を冷まし、解毒を促すため、夏の暑さで疲れた体を整えるのに効果的です。
古くから「血を活かし、月経を整える」薬効があるといわれ、月経不順や月経痛、更年期障害、冷え性、冷えからくる腰痛や腹痛にも有効とされます。
これはα‐ピネンなどの香り成分による働きで、血管を拡張して血行を促す作用があることが明らかになっています。
みょうがを食べるのは日本だけだそうですが、その恩恵を存分にとり入れたいものですね。
利用するのは、春に幼茎を軟化したみょうがたけと、夏から秋に出る花茎のみょうがの子です。日陰地を好み、庭の片隅や家庭菜園に植えておけば、長い間利用できます。

【効果効能】
・みょうがは苦・微温。生理不順を改善し、口内炎、腫れ物に効果がある。
・漢方では、昔から不眠症、月経不順、月経痛に有効とされ、抗菌作用があるので口内炎や風邪予防に役立つといわれている。

みょうがの梅酢漬け
みょうがをそのまま、もしくは縦半分に切ってさっと熱湯にくぐらせ、よく水気をきってから熱いうちに梅酢に漬けて保存する。ご飯に混ぜたりサラダのトッピングなどに利用。

れんこん

極楽浄土を飾るインドの香り高き花。
栽培の発祥地はインドで、古代に中国へ伝わり、朝鮮を経て、仏教渡来前の雄略天皇の時代(5世紀ごろ)に渡来したといわれています。
古名は「はちす」、その花托が蜂の巣に似ていることから名づけられました。
ハス根は泥の中に育つが、花は清浄に美しく咲くので、古来インドでは美の象徴として尊ばれ、仏教の極楽浄土がハスの花で飾られているのは周知の通り。
仏教との関係から、寺院の境内にある池沼で盛んに栽培され、江戸時代には百種を越す品種が生まれました。
ハスは温暖地を好み、日本でも中国、四国、九州、東京周辺で栽培されています。
特に東京周辺の白花蓮は品質、味ともに優れているといわれていますが、愛知県の紅花はすは、肉質も柔らかく収穫量も多いです。
収穫は9月中旬ごろより収穫が始まり、4月ごろまで収穫でき、市場の入荷は12月がピーク。
美味なのはやはり9月から12月にかけてです。

【効果効能】
・生は熱を鎮め、血液を浄化し、瘀血を除く。止血効果が高く、鼻血、吐血、喀血、痔出血を止める。煮て食べれば、脾胃を健やかにし、美肌をつくる。
・ビタミンCを豊富に含み、美肌、かぜ予防、血行促進に働く。
・肌の新陳代謝を活発にして、シミ、ソバカスを防ぐ。
・二日酔いには、れんこんとナシのジュースがよい。れんこんの節のあるところ100gとナシ1個分をミキサーにかけて飲む。この組み合わせは、咳や痰にも有効。れんこんのすりおろし汁は下痢止めにも効果的。

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