年齢を重ねるにつれて、「以前よりも足腰が弱くなった」「転びやすくなった」と感じることはありませんか? これは、加齢に伴い筋肉の量と機能が低下する「サルコペニア」と呼ばれる状態かもしれません。
いつまでも自分の足で元気に歩き、活動的な毎日を送るために、筋肉の健康は非常に重要です。そして、近年、この筋肉の健康と腸内環境の間に、驚くほど密接な関係があることが「腸筋相関」として注目されています。
– 目次 –
年齢とともに筋肉が減っていくサルコペニアとは
サルコペニアと腸内環境
筋肉が腸に働きかける「マイオカイン」の発見
今日から始める「腸活」&「筋活」のススメ
適度な運動を習慣に
タンパク質と食物繊維を意識した食事
年齢とともに筋肉が減っていくサルコペニアとは

サルコペニアとは、加齢によって筋肉の量や力が減ってしまう状態のことをいいます。ギリシャ語で「筋肉(sarx)」と「減少(penia)」を合わせた言葉で、「筋肉がやせていく」という意味です。
年を重ねると、少しずつ体を動かす機会が減り、食事からとるたんぱく質も足りなくなりがちです。そうした生活が続くと、筋肉が衰えていき、立ち上がる・歩く・階段を上るといった日常の動作がだんだんと大変になっていきます。
サルコペニアは「筋肉が減るだけ」ではなく、筋肉量・筋力・身体機能(動きやすさ)の3つの面から総合的に判断されます。診断基準は次のとおりです。まず握力や歩行速度を測り低下があると、筋肉量を測定して基準より低ければ「サルコペニア」と診断されます。
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身体機能(歩く速さなど)の低下
1秒あたり 0.8メートル未満(時速約3km以下)で、動作能力が落ちていると判断。 - 
筋肉量の減少
体組成計やCT、MRIなどで測定します。
基準より筋肉量が少ない場合は、サルコペニアの可能性。 - 
筋力の低下
握力(にぎる力)が、男性で 28kg未満、女性で 18kg未満 の場合、筋力低下と判定。 
サルコペニアと腸内環境

高齢者の腸内環境では、善玉菌が減少し悪玉菌が増加する傾向にあります。
最先端の研究によると、腸内細菌叢(腸内マイクロバイオ―タ)のバランスが乱れることが、筋肉量の減少や筋力低下との関連し、サルコペニアの発症や進行に影響を与える可能性が示唆されています。
腸内細菌の様々な産生物質による筋肉の機能や代謝への直接的または間接的な影響についての研究も進んでいます。
例えば、腸内細菌の中でも善玉菌が生み出す「短鎖脂肪酸」は、筋肉のエネルギー源となったり、筋肉細胞の成長や修復に関わったりしていると考えられています。
筋肉が腸に働きかける「マイオカイン」の発見

さらに興味深いことに、筋肉そのものが、他の臓器に影響を与える生理活性物質を分泌していることが分かってきました。これらは「マイオカイン」と呼ばれ、運動することで分泌が増加することが特徴です。
代表的なマイオカインとしては、「イリシン」や「FGF21(線維芽細胞増殖因子21)」などが知られています。
これらのマイオカインは腸内細菌のバランスや機能に影響を与え、腸の健康を促進する可能性があるという、双方向の「腸筋相関」のメカニズムが解明されつつあります。
つまり、運動によって筋肉が活性化し、マイオカインを分泌することで、腸内環境が改善されるという、素晴らしい循環が期待できるのです。
今日から始める「腸活&筋活」のススメ

いつまでも健やかな体を保ち、自分の足で人生を楽しむためには、腸と筋肉の両方を意識したケアが欠かせません。
適度な運動を習慣に

ウォーキングやスクワット、軽い体操など、ご自身の体力に合わせた運動を毎日少しずつでも続けることが大切です。運動は筋肉を鍛えるだけでなく、腸内マイクロバイオータの多様性を高め、善玉菌を増やす効果があることが分かっています。
タンパク質と食物繊維を意識した食事
筋肉を作るタンパク質はもちろん、腸の善玉菌の餌となる食物繊維を豊富に含む野菜、きのこ、海藻類を積極的に摂り入れましょう。
腸と筋肉は、互いに支え合う関係です。腸を整えることで筋肉の健康を保ち、筋肉を動かすことで腸も元気になる――この好循環を意識して、いつまでも活動的で充実した毎日を送りましょう。
こんにちは、健康管理士・腸内環境管理士の中谷です。三姉妹の母で、毎日にぎやかに過ごしています。楽しみは美味しいお酒と観葉植物を育てること。美酒を作る発酵の力と、植物が持つ癒しのパワーを日々実感中です。植物で大切なのは根っこですが、人間にとっての根っこは腸。腸にまつわるお話や、健やかに過ごすヒントなどをお届けします。ぜひ、ご一読いただければ幸いです。

