
「最近、ズボンがきつくて…」とお腹周りを気にしている友人。健康診断の結果、血糖値や血圧も高めで、医師から「メタボリックシンドローム予備軍ですね」と言われてしまったそうです。
友人はメタボリックシンドローム対策に、カロリー制限や減塩のダイエットをがんばってますが「全然、血液検査の数値が良くならない」としょんぼり。
ダイエットが報われないのはつらいですよね。これ、実は腸内環境の乱れのせいかもしれません。悪玉菌の中には血圧を上げる物質を出す菌や、血糖値を下げにくくする菌がいるというのです。
メタボリックシンドロームだけでなく血管年齢を若く保つためにも腸内環境が大きく影響しています。
– 目次 –
血圧は腸内細菌が影響している
腸内環境によって薬が効きにくくなることも
インスリンの効き目にも影響
コレステロールの薬が腸内細菌を改善する?
食物繊維たっぷりの食生活で若々しい血管へ
発酵性食物繊維に注目しよう!
プロバイオティクスを取り入れるのも◎
血圧は腸内細菌が影響している
「血圧が高いと言われてから、できるだけ塩分を減らしているのに、全然血圧が下がらない」という方、いらっしゃいませんか?
実は、日ごろから塩分が多い食生活をしていた人は、大腸内の塩分濃度が高まっていたため、その環境に適応する腸内細菌が増えています。
血圧が上がってから慌てて塩分の摂取量を減らしても、乱れた細菌バランスが定着しているとなかなか血圧が下がりません。これは、腸内細菌が血圧を上げるように働きかけているためだと考えられています。
腸内環境によって薬が効きにくくなることも
ある研究で、高血圧患者の腸内細菌を無菌のマウスに移植しました。その結果、マウスの食事や運動量は特に変えていないのに、血圧が上昇したそうです。
このように、血圧を上昇させる腸内細菌がいると、血圧を下げる薬を飲んでいても効果が出にくい可能性があります。
親族に高血圧の人がいる人や血圧が気になり始めたと言う人は、できるだけ早い段階で減塩を心がけ、血圧を上げる細菌が棲みにくい腸内環境を整えるよう意識するとよいでしょう。
インスリンの効き目にも影響
血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の働きに影響を及ぼしている腸内細菌がいます。
多くの人に棲み付いているコプロコッカス属の菌が多い人ほど、インスリンがよく働くといいます。
一方、フシモナス菌という菌は糖尿病患者の7割に見られ、インスリンの働きを悪くし血糖値の上昇に影響しています。また、この菌は肥満を加速していることが分かってきており、日本人の肥満にも関係しているとも考えられています。
私たちの血糖値や糖尿病が心配になってきたら、腸内環境を改善する食生活を意識することも大切です。
コレステロールの薬が腸内細菌を改善する?
薬には腸内細菌に悪影響を与えるものが多いですが、スタチンをはじめとする循環器疾患の薬はそれほど影響しないという報告もあります。
なかでも、コレステロールの薬として有名で世界でもっとも飲まれてとも言われる「スタチン」という薬は、腸内細菌に悪影響を与えないということがわかっています。
ヨーロッパの研究では、肥満の人がスタチンを摂取すると、肥満者特有の炎症を起こしやすい腸内フローラが大幅に改善したそうです。スタチンは血管にいい腸内細菌バランスに導いている可能性が明らかになってきています。
高コレステロールの治療で処方された薬は、きちんと服用するようにしましょう。
食物繊維たっぷりの食生活で若々しい血管へ
血管を元気にしてくれる腸内細菌=善玉菌を増やすためには、菌の好きな食物繊維を十分に食べてあげることが大切です。
腸にいる善玉菌は食物繊維を分解し、プロピオン酸や乳酸、酢酸といった短鎖脂肪酸を作ります。
短鎖脂肪酸のひとつであるプロピオン酸の働きは血糖値をコントロールしたり、体内でのコレステロール合成を抑制したりすることです。
また、酢酸は悪玉菌を増えにくくしますし、酪酸には免疫機能を調整する重要な働きがあります。
食物繊維たっぷりの食事で、善玉菌に活躍してもらいましょう。
発酵性食物繊維に注目しよう!
食物繊維はヒトの消化酵素で消化できない栄養だからこそ、腸まで届き細菌たちのエサとして利用されます。
なかでも、水溶性食物繊維などは腸内細菌たちによって分解=発酵されやすい発酵性食物繊維です。
発酵性食物繊維を多く含む食品
全粒穀物・果物・野菜・キノコ・イモ・豆・海藻
欧米では「MAC【microbiota-accesible carbohydrates】(腸内細菌が食べる炭水化物)」と呼び注目しています。シリアルやオートミールを朝食に食べる習慣により、発酵性食物繊維を日本人よりも多く摂れているようです。
日本の長寿者が多い京丹後地区でも、食事に発酵性食物繊維が多く含まれることが分かっています。
プロバイオティクスを取り入れるのも◎
ヨーグルトやサプリメントなどで生きた菌を取り入れる「プロバイオティクス」を取り入れることもおすすめです。
ただし、プロバイオティクスで取り入れた菌たちは体内に定着することはできません。腸の中にいる間だけ働き、しばらくすると外に排泄されてしまいます。
プロバイオティクスのヨーグルトやサプリメントは、3~6ヶ月以上は継続して体調の変化を観察してみてくださいね。
こんにちは、健康管理士・腸内環境管理士の中谷です。三姉妹の母で、毎日にぎやかに過ごしています。楽しみは美味しいお酒と観葉植物を育てること。美酒を作る発酵の力と、植物が持つ癒しのパワーを日々実感中です。植物で大切なのは根っこですが、人間にとっての根っこは腸。腸にまつわるお話や、健やかに過ごすヒントなどをお届けします。ぜひ、ご一読いただければ幸いです。