
前回、老化防止の鍵を握る「ミトコンドリア」のエネルギー代謝についてお伝えしました。ミトコンドリアは常に酸化ストレスに晒されています。老化を防ぐため、酸化ストレスの発生を防ぐという観点からは、食べすぎを減らすことが重要です。
今回は、活性酸素と老化の関係について詳しく解説しますので、これからもより若々しく過ごすためにぜひお役立てください。
活性酸素が体内の炎症を起こす
活性酸素は、私たちの体内で様々な炎症を引き起こす原因となります。
一般的に、炎症とは、ウイルスや細菌といった外部からの侵入者や、傷ついた組織などから体を守るための重要な防御反応です。炎症が起こると、血液中の白血球が血管の内壁を通って、異物や損傷部位へと集まり、それらを攻撃・排除しようとします。
しかし、この防御反応の対象は、必ずしもウイルスや細菌といった病原体だけではありません。
私たちの細胞内にあるエネルギー生産工場、ミトコンドリアが生み出す活性酸素も、炎症を引き起こす要因となるのです。
活性酸素は、過剰に産生されると、内臓、血管細胞、皮膚など、全身の様々な組織に酸化的なダメージを与えます。この酸化ストレスは、全身の老化を促進する主要な原因の一つであり、細胞の機能低下や損傷、そして炎症反応を引き起こすと考えられています。
活性酸素が老化現象につながる
具体的には、シミやシワといった見た目の老化現象だけでなく、がん、糖尿病、関節リウマチなどの慢性的な炎症を伴う疾患、血管を脆くする動脈硬化、そして生活習慣病であるメタボリックシンドロームにも、活性酸素が深く関与していることが知られています。
これらの炎症は、多くの場合、ミトコンドリアの機能が低下したり、正常に機能しなくなったりすることで引き起こされる、無菌性の炎症反応であると考えられています。
体の内側の炎症を知るには
外傷による炎症は、目に見えて分かりやすいものですが、体の内側で起こっている炎症は、どのようにして知ることができるのでしょうか。炎症が起こると、炎症性サイトカインやサブスタンスPといった、痛みを引き起こす物質が体内で産生されます。
体の中で炎症反応が起きているかどうかを客観的に知るためには、血液検査における『CRP(C反応性タンパク)』という項目が重要な指標となります。このCRP値は、健康な人でも加齢とともに上昇する傾向があり、研究によって、CRP値が高い人ほど死亡リスクが高いことが示されています。
ハードな運動は炎症のもと
特に高齢になると、体内で炎症が起きていても、発熱や痛みといった典型的な症状が現れにくい場合があります。
「なんだか体がだるい」「ふらつく」といった症状が続くときは、見過ごさずに医療機関を受診し、医師に相談することが大切です。
CRP値を調べることは、自覚症状がない隠れた病気を見つけ出すための重要な手がかりとなります。
また、激しい運動や食べ過ぎ、過度な精神的ストレスもCRP値を上昇させる要因となります。例えば、普段運動不足の人がいきなり激しい運動をすると、筋肉細胞に酸化ストレスが生じ、筋炎や筋肉の融解が起こり、その結果、翌日のCRP値が上昇することがあります。
日常生活でのちょっとした変化、例えば、家の中でつまずきやすくなった、絨毯の端に足先が引っかかりやすくなったといった経験が増えた方は、筋力やバランス能力の低下が考えられます。
このような状態を改善するために、日常生活に取り入れやすい『ロコモーショントレーニング』が推奨されます。これは、片足立ちとスクワットの2つの動作を中心に、下肢の筋力とバランス能力を鍛える軽い運動によって筋力とバランス機能を効果的に強化できるため、自宅でも無理なく続けることができます。
重要なのは、日々のトレーニングにおいて、運動強度を少しずつ上げていくことで、体に過度な炎症を引き起こさないようにすることです。
運動不足だからといって、急にハードなトレーニングを始めることは、かえって炎症を引き起こす原因となるため避けるべきです。
若さを保つために不可欠なミトコンドリアにも寿命がありますが、幸いなことに、ミトコンドリアは分裂と増殖を繰り返す能力を持っています。体内でミトコンドリアがしっかりと機能するためには、ミトコンドリアが活動しやすい環境を整えることが重要です。