
友人と久しぶりにランチをしたときの話です。
ハンバーグにかぶりつこうとしたら、奥歯が抜けるかと思うほどグラグラしていることに気づきました。友人に「奥歯がグラグラしてる!」と言ったら、「ハンバーグ食べて歯が抜けるなんて、そんなまさか」と笑われてしまいました。
とりあえず反対側の歯でハンバーグを完食。しかし、「まさか…歯がポロリ?」と心配になり、鏡を見たら歯茎が赤く腫れています。歯磨きをしたら歯ぐきから出血まで!
まさかの流血事件に震え上がり、すぐに歯科にかけこみました。すると先生が一言「あらら、歯周病が進んでいますね…」。
まさか、ハンバーグで歯周病が発覚するとは!しかも、歯周病は免疫力を狂わせ、全身の怖い病気を引き起こす元凶にもなっているそうです。
体の健康はお口から!今回は、歯周病と免疫力についてお伝えしていきます。
全身をむしばむ小さな悪魔「歯周病菌」
歯周病菌は、歯と歯ぐきのすきまにできた歯周ポケットに侵入した歯周病菌によって炎症が起こる病気です。
進行すると歯を支えている歯槽骨という骨を溶かし、最終的には歯が抜けてしまいます。
以前は、歯周病は口だけに関わる疾患で全身へ影響するとは考えられていませんでした。しかし、血流に乗った歯周病菌が全身のあらゆる臓器に悪影響を与えていることが、近年分かってきました。
現在の日本では、30歳以上で歯周病にかかっている人が80%を超えています。15歳~24歳の若い世代でも歯周病患者数が増加中です。あらゆる世代で、正しい歯周病対策が必要となっています。
病気を招く歯ぐきの出血
歯周病菌は歯ぐきに熱と痛み、腫れを伴う炎症を起こします。炎症が進むと血やウミが出てきて、歯を支えている骨を溶かします。治療しても溶けた骨は戻せず、重症化すると進行を止めることしかできません。
しかも、歯周病菌と炎症性物質(サイトカイン)は、血管から吸収されたり、口から飲みこまれ腸から吸収されたりして、体中にばらまかれ炎症を起こします。
歯周病菌が血管内に侵入する「菌血症」
歯周病を放っておいて悪化すると、食事や歯みがきのたびに感染した部分から出血を起こします。そして、歯周病菌はその破れた血管から体内に侵入するのです。
歯周病菌のなかには、しっぽのようなせん毛で血管の内膜細胞を溶かして血管の壁の中に侵入するばい菌がおり、血管内膜と中膜の間に感染します。
すると免疫細胞が感染を起こした歯周病菌を見つけて闘い、炎症を起こします。その結果、作り出されるのが炎症性タンパク質です。
炎症性タンパク質と血液中に入り込んだ歯周病菌は、血管を通じて全身を巡り、体中にダメージを与えます。
歯周病菌が腸内環境を壊す
現代人は、食生活の乱れやストレスなどにより、胃酸の分泌量が減少していると言われています。かつては歯周病菌を飲みこんでも胃酸で殺菌できていましたが、歯周病菌がダイレクトに腸まで到達するようになりました。
すると腸の善玉菌が異常に減少し、反対に悪玉菌が異常に増殖、腸内環境の乱れが歯周病菌によって引き起こされます。
腸内環境が悪くなると腸漏れ(リーキーガット症候群)を起こし腸のバリア機能が低下。歯周病菌が腸の血管へから体内へ侵入し、全身に悪影響を及ぼします。
免疫力を劇的に高める50回咀嚼
よく噛まないで早食いする人は、血糖値上昇、高血圧などのリスクが上がることが分かっています。
また、未消化のまま胃腸に食べ物が送り込まれるので消化活動がうまくいかず、消化にエネルギーが消費されないため、基礎代謝低下の原因です。太りやすくなるのはもちろんのこと、体の冷えや血流の悪化にもつながります。
さらに、期待できるのは唾液に含まれる酵素によるがん予防効果です。食べ物に含まれる毒物や食品添加物などの発がん物質によって作られた活性酸素は唾液に混ざると分解され、浄化されます。
ひと口の目安はスプーン一杯分。普通の人が噛む回数は10~20回以内、早食いの人は10回以下と言われています。50回も噛むのはなかなか慣れないと難しいかもしれませんが、健康にはいいことずくめです。ぜひ習慣にしてみてください。
お口のお手入れを忘れずに!
どんなに良い栄養を取り入れたところで、入り口であるお口の中に問題あっては元も子もありません。
毎食事後の歯みがきはもちろん、一日一回はデンタルフロスや歯間ブラシで歯と歯の間のお手入れも忘れずに行いましょう。
また、定期的な歯科健診も大切です。自分のお口の状態をこまめにチェックすることが、お口と身体の健やかさにつながります。
こんにちは、健康管理士・腸内環境管理士の中谷です。三姉妹の母で、毎日にぎやかに過ごしています。楽しみは美味しいお酒と観葉植物を育てること。美酒を作る発酵の力と、植物が持つ癒しのパワーを日々実感中です。植物で大切なのは根っこですが、人間にとっての根っこは腸。腸にまつわるお話や、健やかに過ごすヒントなどをお届けします。ぜひ、ご一読いただければ幸いです。